言いにくいことをどう伝えれば相手は気分を害さないのか。人気の国語講師・吉田裕子さんは「忠告、悪い報告、無理なお願いなどをするときに覚えておくといい波風を立たせない言葉がある」という――。
※本稿は、吉田裕子『[新版]大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
「気の置けない友人」は別として、多くの人づきあいでは、気をつかい、できるだけ波風が立たないよう、発言にも気を配る必要があることが多いでしょう。本記事では、忠告、悪い報告、無理なお願いなどをするときに、言いにくいこともきちんと伝えられる言葉をご紹介します。
自慢に聞こえず奥ゆかしい印象を与える
「手前味噌」
自慢すること
例文 手前味噌にはなりますが、弊社は創業以来七期連続で増収増益です。
味噌を各家庭で手作りしていた時代、「自分の家で作った味噌のほうが、他の家のものよりもおいしいぞ」と自慢することを「手前味噌」といいました。今でも、自分の手柄や自社の業績、身内の成功などを自慢気に披露する様子をいう言葉として使われています。
「おい、それは手前味噌だぞ」と、人の自慢を注意するような使い方はしません。自慢になりそうな話をする際、最初に「手前味噌ですが」と断っておくと、奥ゆかしい印象になります。
〈関連〉同様の表現に「自画自賛」があります。「自画自賛のようでおそれいりますが」などと使えます。
「お汲み取りください」
自分の行動や考えをわかってほしいということ
例文 勝手を申しますが、どうか事情をお汲み取りください。
口にしがたい、あるいは、詳しく伝えるのは遠慮されるような自分側の事情をわかってほしいときに使います。たとえば、予算が削減され、従来よりも安い金額で仕事を依頼しなくてはならなくなったとき、いちいち、会社の経営状態などの事情を全部説明するようなことはしません。そういうとき、「不景気の折から、どうかお汲み取りください」と使うわけです。
類語の「お察しください」も同様ですが、相手の理解力や度量の大きさを頼りにしているというニュアンスが含まれます。相手を立てて要望をのんでもらおうとするわけです。
〈関連〉漢語では「ご斟酌ください」「ご賢察ください」といいます。