美しい筋肉を手に入れるには、激しいトレーニングが必要だといわれきた。だが、それはもう古い。理学療法士の庵野拓将氏は「近年の研究で、筋肥大に『追い込み』は必要ないとわかってきた。重要なことは『総負荷量』だ」という――。
※本稿は、『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
筋トレの成果は「バーベルの重さ」では決まらない
筋肉を大きくしたいと考えた場合、従来の筋トレの“常識”では「とにかく高強度のトレーニングをひたすらやり続ける」ことが推奨されていました。
しかし、最新のスポーツ科学は「低強度トレーニングでも、回数を増やせば、高強度と同じ効果が得られる」ことを示唆しています。
つまり、筋肥大の効果には、従来言われていたトレーニング強度ではなく、強度に回数やセット数をかけ合わせた『総負荷量』にカギがあるということです。詳しく紹介する前に、まずは、筋肉はどのようなメカニズムで太くなっていくのかを見ていきましょう。
どれだけ筋繊維を収縮させられるか
筋肉は、数千から数十万本という筋線維が束になって形づくられています(図表1)。筋肥大は、筋線維の一本一本を肥大させていくことで生じます。筋線維は1つの筋細胞が細長くなったもので、アクチンとミオシンといった筋タンパク質からできており、筋線維の肥大は筋タンパク質の合成によってもたらされます。この筋タンパク質の合成は、筋線維の収縮がスイッチとなって促進されます。そのため、筋肥大の効果を最大化するためには、トレーニングによって「なるべく多くの(できれば全ての)筋線維を収縮させること」がポイントになるのです。