継続的なトレーニングにも有効な「筋肉の新常識」

なお、これらの報告は、筋タンパク質の合成率や筋肥大の「短期的」な効果を調べたものです。しかし、トレーニングに励む人にとって最も重要なのは、継続的なトレーニングによる「長期的」な効果でしょう。

庵野拓将『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』(KADOKAWA)

2012年、マクマスター大学のミッチェルらは、トレーニング未経験者を対象に、レッグエクステンションを高強度で行うグループと、低強度で行うグループに分けて検証しました。両グループともに1日3セットで週3回、疲労困憊になるまでトレーニングを行い、これを10週間継続しました。その結果、両グループともに大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)の筋肉量は増加したものの、グループ間で筋肉量の有意な差は認められませんでした。2016年の同大学のマートンらが行った多関節トレーニング(複数の関節に負荷をかけるトレーニング)の研究でも、同様の結果が出ています。

つまり、長期的な筋肥大の効果においても、低強度トレーニングでも回数を増やして総負荷量を高めれば、高強度と同等の効果が得られることが示唆されたのです。そして2017年には、これらの報告をまとめて解析したメタアナリシスが報告され、低強度でも高強度でも総負荷量を高めれば、筋肥大の効果は同等であることが示されています。

現在はこれらの研究報告が「筋肥大の効果は『総負荷量』によって決まる」という、筋トレの新たな“常識”を支える科学的根拠(エビデンス)となっています。

「筋肉を大きくしたければ、高強度でトレーニングをしよう」から、「筋肉を大きくしたければ、トレーニングによる『総負荷量』を高めよう」へ──。最新の研究によって、現在は総負荷量を高めるための様々なトレーニング因子が検証され、その最適解も明らかになっています。これまでは、トレーナーのアドバイスや、情報源の不確かな俗説に振り回されている人も多くいました。しかし近年は筋トレに関する様々なエビデンスが揃っています。現代が「科学的に筋肉を鍛える時代」といえる理由は、こうしたエビデンスのなかから自分に最適なトレーニング法を選択できる時代が到来したということなのです。