※本稿は、庵野拓将『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
筋トレは病気の死亡率を下げることが可能
2013年、アメリカ・スローンケタリング記念がん研究所のレマンヌらは、世界で初めて「筋トレ」と「がんの死亡率」の関係を明らかにしました。
がんと診断された18歳から81歳の男女2863名を対象に、筋トレによる死亡率への影響を調査したのです。その結果、トレーニングを1週間に1回以上行っている場合、トレーニングをしていない場合と比べて、がんの死亡率が33%減少しました。
レマンヌらは、「健康増進のためには有酸素運動だけでなく、フィットネスでの筋トレを促すべきである」と述べています。
またその後、筋トレへの期待は、がんによる死亡率の減少だけでなく、すべての病気による死亡率を下げることもわかりました。
アメリカ・ミシシッピ大学のダンケルらは、病気による死亡率と筋トレの関係について疫学的調査を実施し、20歳以上の男女8772名を対象にして平均6.7年の追跡調査を行っています。その結果、トレーニングを継続的に行っている場合、トレーニングをしていない場合に比べて「すべての病気の死亡率が23%減少する」ことが示されたのです。
また、この死亡率の減少は、1週間に2~3回の頻度で継続的にトレーニングを行っている場合に有意であり、それ以上(例えば週5回)では死亡率の減少効果が低いことが明らかになりました。
「週2~3回」がちょうどいい理由
「週2~3回」が最適な理由のひとつに、「トレーニングの継続性」が挙げられています。
例えば、週5~7回のトレーニングを行うとします。その場合、ほぼ毎日トレーニングを行うことになり、心的飽和や疲労で継続することが難しくなるのです。
そして2017年、シドニー大学のスタマタキスらによって、かつてないほどの大規模調査が行われました。30歳以上の男女8万306名を対象に、週2回以上のトレーニングと週150分以上の有酸素運動が与える「がん」と「すべての病気」による死亡率への影響が調査されたのです。その結果、がんによる死亡率は31%減少し、すべての病気による死亡率は23%減少することが明らかになりました。
また、「ジムでのトレーニング」と「家での自重トレーニング」による、影響も調査しています。結果は、ジムでも家でも同等の死亡率の減少を示し、両方の環境で行えばさらなる死亡率の減少が示されています。
トレーニングが死亡率を減少させるメカニズムには、次のことが挙げられます。
・トレーニングによる血圧低下
・糖尿病のリスク低下
・グルコース代謝の改善
・全身性炎症の減少
・抑うつ症状の軽減
・認知機能の改善
・筋肉量の維持・増加
スタマタキスらの報告は、先立って明らかとなっていた「習慣的(週2回以上)な筋トレは、がんの死亡率を3割減らし、すべての病気による死亡率を2割減らす」という事実を改めて裏付けたのです。