日本人は欧米人に比べて、不安障害やうつ病が多いことが知られています。
精神医学や脳科学では、この原因をセロトニンの発現量の違いであることを明らかにしています。日本人の97%は脳内のセロトニン発現量が少なく、ネガティブなことに対して強い不安をもちやすいのです。
「不安」とは、人間の生存本能として持つ不可欠な感情ですが、過度な状態が続くと最終的には不安障害やうつ病という、心の病気へと広がります。そこで、精神医学やスポーツ科学では、投薬や認知行動療法の補助的手段として、有酸素運動を推奨しています。
これは、幸福感を高めるセロトニンやエンドルフィンといった神経伝達物質、神経成長因子の関与が不安を抑えていることに寄与します。
そして近年では、「筋トレ」も不安を解消する運動として注目を集め始めています。
心の平穏には日々のトレーニングが重要
2017年に世界で初めて、筋トレと、不安やストレスとの関係を調査した16の研究報告をまとめて解析したメタアナリシスが報告されました。筋トレは、健常者の不安を大幅に改善させるとともに、不安障害などの患者の不安も改善することが示されたのです。
また、これらの改善効果は、性別、年齢の影響も受けません。つまり、筋トレを生涯にわたって継続すれば、心の不安を和らげて暮らしていくことができます。
また筋トレは、うつ病への効果もあります。
運動をしない人に比べ、運動をする人は、心身の健康が悪化した日が過去1カ月で1.49日少なかったのです。なお、過剰な運動はメンタルへの悪化に繋がることもわかりました(1回3時間、週5回以上)。
筋トレを行っていた被験者では、週3~5回、1回45分以上のトレーニングで20.1%にメンタル改善の効果が認められたのです。
先に述べたとおり、日本人は特にセロトニンの発現量が少なく、不安障害やうつ病を発症させやすい性質をもっています。もし、心に違和感を覚えることがあれば、ぜひ次の言葉を思い出してください。
「不安、落ち込み、ストレスを感じたときは、筋トレをしよう!」
理学療法士、トレーナー、博士(医学)
大学院修了後、大学病院のリハビリセンターに勤務。けがや病気をした患者やアスリートのトレーナーとして、これまで延べ6万人の体づくりに携わってきた。大学病院では、世界最先端の研究成果を現場でのトレーニングにフィードバックするため、研究発表、論文執筆も行っている。筆名・庵野拓将として、筋トレ、スポーツ栄養学をはじめとする最新の研究報告を紹介するブログ「リハビリmemo」を主宰。