ムリない重さでも回数を増やせば鍛えられる

これまで低強度トレーニングでは、少ない数の筋線維の収縮にとどまってしまい、十分な筋肥大の効果が得られないと考えられてきました。これに対して、高強度トレーニングは、多くの筋線維を収縮させることができます。しかし、高強度トレーニングは、身体への負担が大きく、筋トレの初心者や未経験者、高齢者にとって簡単ではありません。また当然、「つらさ」「苦しさ」を伴い、筋トレを長く続けていくためのモチベーションにも影響します。ところが近年、低強度トレーニングでも総負荷量を高めれば、多くの筋線維を収縮させることが可能であり、高強度のそれと同等の効果を得られることがわかってきたのです。

筋肥大の決め手になる「総負荷量」とは

総負荷量は「トレーニングの強度(重量)×回数×セット数」によって決まりますが、そのエビデンスのひとつとなっているのが次の報告です。

2010年、カナダにあるマクマスター大学のバードらはトレーニング経験者を2つのグループに分け、高強度でのレッグエクステンションを、一方のグループは1セット、もう一方のグループは3セット、それぞれ疲労困憊になるまで行いました。

終了後、両グループの平均総負荷量を計測したところ、1セットのグループの平均総負荷量は942kg、3セットのグループは2184kgとなりました。さらに、トレーニング後の筋タンパク質の合成率を計測すると、総負荷量の高かった3セットのグループが有意な増加を示していたのです。

この結果から、強度が同じでも、セット数を多く行い、総負荷量を高めることで筋肥大の効果が増大することが示されたのです(図表2)。

さらに、低強度トレーニングの場合も、総負荷量を高めれば筋肥大の効果が大きくなることが報告されています。

バードらは、高強度でレッグエクステンションを行うグループ、低強度で行うグループに分け、それぞれ疲労困憊になるまで行わせました。その結果、高強度グループのトレーニング回数は5回ほどで終わった一方、低強度グループの回数は24回となり、総負荷量は高強度の710kgに対して、低強度は1073kgとなりました。気になる筋タンパク質の合成率では、総負荷量の大きな低強度グループがより高い増加を示したのです。

この報告により、低強度トレーニングにおいても、回数を多くし、総負荷量を高めることで、高強度と同等の筋肥大の効果が得られることが示唆されたのです(図表3)。