ヴェイパーか? アルファか? どっちのナイキを選ぶべきか

箱根駅伝だけでなく、1日のニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)もナイキの使用率は高かった。出場した252人中224人(88.9%)が着用していたのだ。

厚底シューズが登場した2017年春からトップ選手が次々とナイキに履き替えており、ナイキ王者の時代がしばらく続くと見られるが、今年正月の駅伝では従来と異なる“現象”が起きた。それは同じナイキ厚底シューズでも、使用モデルが2つに割れたことだ。

●「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」(以下、ヴェイパー):カーボンファイバープレートとズーム X フォームで構成されるナイキ厚底シューズの3代目

「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」
写真提供=ナイキ
ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%

●「エア ズーム アルファフライ ネクスト%」(以下、アルファ):ヴェイパーがベースで前足部にエアを搭載した最新モデル。

「エア ズーム アルファフライ ネクスト%」
写真提供=ナイキ
エア ズーム アルファフライ ネクスト%

2019年9月に行われたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で多くの選手が履いていたピンク色のシューズが前者。2020年3月の東京マラソンで2時間5分29秒の日本記録を樹立した大迫傑(Nike)が着用していた黒と緑のシューズが後者だ。

今回の箱根駅伝の区間賞でいうと、2、5、6、8、10区が前者で、1、3、4、9区が後者。総合優勝を果たした駒大の選手は、5区と7~10区(計5区間)が前者、1~4区と6区(計5区間)が後者を履いていた。

両モデルは同じナイキ厚底シューズでも“感覚”が少し異なる。ナイキとユニフォーム契約をしている中大の藤原正和駅伝監督はこんなことを話していた。

「(前者の)のヴェイパーは万人受けするというか、多くの選手が使いこなしやすいのかなと思います。一方、(後者の)アルファはスイートスポット(最適箇所)がヴェイパーほど広くはないシューズだと思うので、乗りこなせる選手が少ない印象です。でも使いこなせたら、相当なゲイン(利得)をもらえるんじゃないでしょうか」

箱根10区、逆転した駒大生はヴェイパー、抜かれた創価大生はアルファ

東京五輪男子マラソン代表に内定している服部勇馬(トヨタ自動車)も「アルファは重心移動がヴェイパーよりも格段に速いので、初めて履いたときは、体が少しついていかない感覚がありました」という感想を持っていた。

今大会は駒大が最終10区で3分19秒差を大逆転した。ヒーローになった駒大・石川拓慎はヴェイパーを着用していたが、逆転を許した創価大・小野寺勇樹はアルファを履いていた。小野寺は過度な緊張があっただけでなく、シューズのミスマッチが失速の原因になったかもしれない。

実際、筆者は両モデルを試してみた。あくまで個人的な感想だが前足にエアが搭載されているアルファよりもヴェイパーのほうがスムーズに走れる感触があった。ちなみにヴェイパーは税込3万0250円、アルファは税込3万3000円とほぼ互角。自費で購入している選手は両モデルを履き比べるのは難しいが、どの厚底シューズを選ぶのかという“新時代”に突入したようだ。