首都圏や近畿地方などを対象に発令されていた新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言。首都圏4都県については3月8日から2週間の延長が決まったが、その裏には首都圏4知事による「延長」要望のパフォーマンスがあったと見られている。ところが7日のテレビ番組「日曜報道THE PRIME」(フジテレビ)で、当事者の一人である黒岩祐治神奈川県知事が爆弾証言、4知事揃っての「延長要請」は小池百合子東京都知事による独断専行だったことが明らかになった。
 黒岩証言の通りだとすれば小池知事のやり方は乱暴だ。再延長に消極的とみられていた政府、菅首相に揺さぶりをかけるため、黒岩さんら3人の知事をうまく利用したと取られても仕方がない。一方、小池知事は「やりとりについては準備段階の中でいろいろありますが、信義則は守っていきたい」「普通のやり方を進めていた」などと釈明。黒岩知事らに事実とは異なる説明をしたことについては言及を避けた。
 政界は権謀術数が渦巻く世界とはいいながら、当事者の一方から裏話が暴露されるのは珍しいこと。同番組のメインコメンテーターとして黒岩発言を受け止めた橋下徹氏は、知事経験者として両知事の態度振る舞いをどう見るか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(3月16日配信)から抜粋記事をお届けします。

(略)

「おしゃべりおじさん」は国民にとってプラス

黒岩さんの態度振る舞いに批判はありますが、国民にこのような内情を教えてくれた点で僕は大いに評価しています。ここはキャスター魂が燃え盛ったのでしょうか(笑)

ただし小池さんの対応もしたたか。事実と全く異なるなら全否定すればいいものの、さすがにそこまでは嘘は付けない。だから信義則を守る、と言って、自分は内情については話さない、黒岩さんはおしゃべりだ、というニュアンスで乗り切りました。

ポイントは埼玉の大野知事や千葉の森田知事がどう出るか。案の定、暴露はしませんよね。内々の話を暴露するのは恥ずかしいと感じたのでしょう。

ここが報道マンと一般人の感覚の違い。こうなると事実がどうかということよりも、黒岩さんがおしゃべりおじさんだという印象が流れてしまいます(笑)

僕はおしゃべりおじさんの方が国民にとってプラスだと思うのですが、世間はどうでしょうか?

まさにマキャベリズム!!

それと結果についての世論が重要です。小池さんは宣言延長派、黒岩さんは延長否定派、という結論です。そして世論の圧倒的多数は延長派。

橋下 徹『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』(プレジデント社)
橋下 徹『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』(プレジデント社)

ということで途中経緯がどうであろうと小池さんに大きな批判は向かないんでしょうね。

メディアのコメンテーターは、小池さん批判を強めましたが、この程度のやり取りは、宣言延長という結論をもってすべて吹き飛ぶのでしょう。やり口が汚い、政治的だ、などなどコメンテーターは小池さんを罵りましたが、しかしそのような態度振る舞いは、宣言延長のためということであれば、世論は小池さんを強く批判しないでしょう。

まさにマキャベリズム!!

結果が是であれば、途中経緯の不道徳は気にしない。こういう政治家としての態度振る舞いについて僕は小池さんを評価します。

各番組で小池さんを評価したら、出演者、特に東国原さんからは厳しく反論を受けました。僕はこのマキャベリズム的政治行動について評価したまでで、しかしその後のコロナ対応については無責任だと思います。これは政府もです。

緊急事態宣言を延長するのはいいが、では社会的経済活動をどこまで政治の責任で抑制するのかについて、まったく政治の覚悟がありません。

結局、宣言を延長するだけ。国民も宣言の延長で政治が何かをやってくれた、対策をやってくれたと勘違いしてしまっています。

宣言だけでは何の意味もないし、逆にきっちりと社会経済活動の抑制をやれば宣言は不要です。

(略)

(ここまでリード文を除き約1000字、メールマガジン全文は約1万700字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.240(3月16日配信)の「本論」から一部を抜粋したものです。もっと読みたい方は、メールマガジン購読をご検討ください。今号は《[特別編集版]緊急事態宣言再延長! 黒岩知事の「爆弾証言」をどう聞くか》特集です。

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