政府は新型コロナ感染症の第4波が疑われる大阪府や兵庫県、宮城県を対象に「まん延防止等重点措置」の適用を開始した。メディアでは早速、「まん延防止等重点措置」を「マンボウ」と省略して呼んだり、それでは「ふざけている感じがする」として別の呼び方を提唱したりする意見が交わされている。だが、ここで問われるべきは名称ではなく、内容である。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(4月6日配信)から抜粋記事をお届けします。

「まん延防止」と呼ぶだけで感染拡大は抑えられるか

年初からの緊急事態宣言が全都道府県で解除されたが、大阪府をはじめ各地で新型コロナ感染症感染拡大の「第4波」とみられる動きが確認できたため、政府は大阪府などに新型コロナ特措法に基づく「まん延防止等重点措置」の適用を決めた。これにより、大阪市内の飲食店への時短要請を現状の「夜9時まで」から「夜8時まで」に変更、また大阪府民に対し「4人以下でのマスク会食の徹底」などを求めることになった。

橋下 徹『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』(プレジデント社)
橋下 徹『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』(プレジデント社)

この流れの中で、まん延防止等重点措置という名称が長いので「マンボウ」という呼び方が広まったが、それでは「ふざけている感じがする」「軽い感じがする」という理由から、「マンボウ」の呼び方を止めて「まん延防止」という呼び方にしようという動きが、政治行政やメディアの中で出てきた。

しかし、この考え方こそが危ない。

というのは、このように呼び方・メッセージにこだわる考え方は、「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」という「メッセージ」によって感染拡大を抑えようという考え方につながってしまうからだ。

この象徴例は小池百合子東京都知事だ。小池さんは、次から次へとカタカナ交じりの「フレーズ」を生み出してきた。

もちろん「フレーズ」によって国民の間に危機感を醸成し、国民の行動変容を促すというのはひとつの手段であり、昨年来からある程度の効果があったところは事実である。

しかし年明けの第3波に対する緊急事態宣言の宣言効果は徐々に薄れていったことも間違いない。3月22日の緊急事態宣言解除のあたりには、もはや街中の人出は普通に戻り、宣言の効果は見当たらなくなっていた。

緊急事態宣言は「催眠術」

ゆえに僕は、「緊急事態宣言は催眠術のようなもの。宣言を出すことで、政治行政は何か対策をやった気になってしまうし、国民の方も宣言自体で効果が出るものだと錯覚してしまう。ゆえにいったん効果のなくなった緊急事態宣言という催眠術を解いて、本来やらなければならない対策をしっかりと講じるべき」という持論を展開して、緊急事態宣言解除を主張した。

その趣旨は、宣言を解除することによって社会経済活動を一気に完全に戻すのではなく、解除後にしっかりとした対策を講じるべきというものだ。それは、まん延防止等重点措置にそのままつなぐべきというものだった。

ところが、政府をはじめとする政治行政は、宣言解除後、まん延防止等重点措置につなぐことはしなかった。

「緊急事態」「まん延防止等重点措置」「とことんステイホーム」などを宣言することで国民の行動が完全に変わるのであれば、感染拡大を抑えることができるのであろうが、そのようなフレーズの効果はどこかで必ず途切れる。

他方、緊急事態宣言によって政治が国民に対して具体的に義務化したのは、飲食店の営業の制限のみだ。

そして、この制限は営業時間の短縮という、いわゆる時短要請が軸となったが、飲食店の時短は、本質的な感染対策ではない。

だって、感染対策を講じていないお店であれば、時短営業内において感染は拡大していくのだから。

(ここまでリード文を除き約1300字、メールマガジン全文は約1万1100字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.242(4月6日配信)の「本論」から一部を抜粋したものです。気になった方は、メールマガジン購読をご検討ください。今号は《【これが本質的な感染対策】「催眠術」の効果は切れた。時短ではなく飛沫感染防止の義務化を急げ》特集です。

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