G7各国の中で同性婚を認めていないのは日本だけとされており、今回の判決は同性婚の制度化に向けて一歩踏み出す内容だ。この判決をどう読み解くか。激論が交わされたオンラインサロン《橋下徹の激辛政治経済ゼミ》のやり取りの中から、橋下氏の見解を紹介する。以下はプレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(3月23日配信)からの抜粋記事である。
(略)
憲法24条を持ち出して同性婚を否定するロジックは止めた方がいい
【塾生A】パートナー制を間に入れることには賛成ですが、さらにパートナー制を発展させて、同性婚を法律化するには、憲法24条の改正までは必要ないと思います。僕には、わざわざハードルが高い改憲にこだわる理屈が全く理解できませんでした。
【橋下徹】Aさんの法論理は、完全に玄人です。まさに木村草太ロジック(笑)。別の国会議員Dさんの選択的夫婦別姓に関する通常使用法的効果付与案も同じロジックです。
繰り返しますが、憲法24条は同性婚を禁止していないというのがほぼ多数説。もちろん同性婚の法律化を命じているわけでもありません。
憲法24条を持ち出して同性婚を否定するロジックは止めた方がいいでしょう。それを言い出したら、憲法を変えて明確化した方がいいことは無限に出てきます。
なんで同性婚だけ憲法改正して明確化するの? と総ツッコミを受けるでしょう。ここはやはり同性婚を真正面から認めるか否かの価値判断です。
僕は戸籍から認める派(同性婚の法律化)。
次に戸籍の同性婚は認めないが、法的利益は認める派(パートナーシップ制)。日本維新の会の夫婦別姓通称使用法案はココ。
そして戸籍も法的利益も認めない完全反対派。
これらを決めるのに憲法24条は関係ありません。
【国会議員D】塾長、ありがとうございます。憲法24条を理由に同性婚を認めないというより、憲法で保障した方が明確でより良いのではないか? と考えましたが、確かにご指摘の通り
「なんでそのテーマだけ特別で、憲法改正が必要なんだ?」
という新たな火種が生まれてしまいますね。
その価値判断で言うと、私は戸籍から認めても良い派。でも合意形成の難易度を考えると戸籍には触れずに法的利益を確保した方が現実的に思えます。党内でも議論してみます!
選択的夫婦別姓をしたい人(異性間)も、同性婚を望む人も使える、戸籍は現状を維持したままで、戸籍制度には触れない新しいパートナーシップ法案をまとめて提示するのが維新案としては筋が良さそうですね。
親や親戚が反対しようが、2人が合意しさえすれば婚姻は成立する
【塾生A】塾長、有難うございます。
たしか木村草太ロジックで言えば「NewsBAR橋下」で、憲法24条の「両性の合意のみに基づいて成立」の「両性」の解釈は、「結婚は男女でなければならない」という意味ではなくて、「いくら親や親戚が反対しようが、2人が合意しさえすれば婚姻は成立する」という意味だと仰っていたと記憶していますが、僕はその解釈に大いに同意でした。
憲法制定当時の時代背景によって「両性のみ」という表現になっていますが、その時代の人が同性の結婚はけしからんことだから、憲法で禁止にしようとして明記したという解釈は、やはり無理があるという感覚です。
当時は、結婚は親が決めるものだ、家が決めるものだという固定観念、価値観があった時代で、そこを「2人の合意のみで成立する」という憲法は、当時で考えれば、多様性を認める画期的な憲法だったんだなと思っています。
【橋下徹】Aさん、まさにそうなんです。同性婚断固反対派は完全に憲法24条の解釈を間違っています。
憲法制定当時において、憲法24条は本人たちの意思を尊重する画期的なものでした。結婚は本人たちの意思だけでよい。そうであれば当事者の意思による同性婚を排除しているわけではない、むしろ認めていると解釈すべきなんでしょう。両性=男女という文言に引っ張られるのはおかしいというのが法律界での多数説です。
当時はたまたま同性婚が想定されていなかっただけ。憲法24条は「男女」に意味があるのではなく、当事者の「合意」に意味がある規定なのです。
さらに最近、同性婚の間で不倫の慰謝料請求を認める最高裁判決が出ました。同性婚の受理を否定したことを違憲とした札幌地裁判決に関して、ますます塾生Aさんの論が説得性を持ちます。僕が主張した立法裁量論は否定されるかもしれません(笑)。良いことです!
(略)
(リード文を除き約1600字、メールマガジン全文は約1万2100字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》Vol.241(3月23日配信)の「本論」から一部を抜粋したものです。気になった方はメールマガジン購読をご検討ください。今号は《【議論沸騰「同性婚」】なぜ札幌地裁は司法試験レベルで「ルール違反」の違憲判決を出したか》特集です。