ジャニー喜多川氏の性加害問題では、子どもに性加害をしようとする加害者が子ども(時には親も)の信頼を得ようとする「性的グルーミング(手なずけ)」にも注目が集まった。では、実際の性的グルーミングの手口にはどんなものがあるのか。犯罪心理学者で、性暴力被害者のケアや心理分析などに携わってきた櫻井鼓さんは「子どもは、加害者から『自分だけ特別扱いをされた、何かしてもらった』という思いから、性的な行為をされていやだと思ってもそれを言い出せないことがある」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、櫻井鼓『「だれにも言っちゃだめだよ」に従ってしまう子どもたち』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。

寝室でオンラインチャットをする10代の女の子
写真=iStock.com/PrathanChorruangsak
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「おれも!」

子ども:私なんて、ぜんぜん友だちとかいないし

加害者:えー、じゃあ友だちになろ。好きなこと教えてよ

子ども:ダンスやってます。うまくないけど……

加害者:おれも! 後でDMで動画とか送ってよ!

子ども:ほんと⁉ じゃあ、自信ないけど送ってみる!

オンラインゲームのリスク

ゲームって楽しいですよね。私もそう思っています。ですから、オンラインゲーム自体を否定するわけではないのですが、やはりリスクがあるということは知っておくべきでしょう。

いっしょにオンラインゲームをする相手を探すために、SNSに「フレンド募集ぼしゅう」というハッシュタグ(#)をつける小学生もいて、見知らぬ大人と子どもが出会う場になっています。

オンラインゲームで遊ぶときには、テキストチャットやボイスチャットを使ったやりとりをするので、相手の性別や年代、パーソナリティが推測しやすくなります。積極的に個人情報を伝えていないつもりでも、相手になんとなく自分のことを知られてしまうということですね。

さらに、オンラインゲームではチームになっていっしょに戦ったりするので、相手との関係が築かれやすくなります。

ちなみに、足もとが不安定なつり橋をドキドキしながらわたっているとき、その場に魅力的な人がいると、その人が原因でドキドキしているのだと誤解してしまう「つり橋効果」と呼ばれる現象があります。

厳密には議論の余地を残している心理学実験ではありますが、少なくとも人は興奮状況にあると、別の物事がその原因だと考えてしまう可能性があるということです。いっしょにゲームをやっていて興奮したり楽しいと思ったりすれば、その相手に好印象を抱きやすくなることでしょう。