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府と市「統合」案件の中でも難航したのが大学統合
改革の3要素はトップが「方向性」を示すことと官僚や専門家が「計画」を立てること、そして組織全体に改革へ向けての「熱量」を吹き込むことだ。
大阪では、都構想運動によって府庁や市役所に改革の熱量が行き渡り、まずは府と市とで分散していた信用保証協会や衛生研究所などの統合という具体的な成果が出た、というところまでを前号では論じた。
こうした府と市の二重行政解消という都構想運動の流れは、その後、大阪府立大学と大阪市立大学の統合、市営大阪港と府営堺泉北港の統合へと進んでいく。なかでも難航したのは、府立・市立両大学の統合だった。
僕が2008年に知事に就任したときに、大阪の大学強化策の一環として府立大学、市立大学の統合を口にした。このときの大阪府庁や大阪市役所職員の白けた顔を思い出す。
「何ばかげたことを言ってるんだ?」とね。
大阪府立大学はそれまでの間に、府立の大阪女子大学や看護大学を統合して現在の形になった。大阪府側だけの大学統合だけで莫大なエネルギーを割いてきた。それに加えて市立大学との統合だって?? という感じ。
そんなのは逆立ちして東京大阪間を往復するよりも困難なことだ、というのが府庁職員の認識だった。
学長の発言「統合なんてあり得ませんよ」で火が点いた
市立大学側も反対というよりも、失笑という感じだった。歴史も伝統も、またレベル的にも市立大学の方が上だというプライドがあったのだろう。府立大学と統合なんてあり得ない! という認識だった。
僕が知事としてある会合に出席したときに、市立大学の学長もそこに参加していた。確か立食パーティー形式だったと思う。
その市立大学の学長が僕のところに近づいてきて、「府立大学との統合なんてあり得ませんよ」と言ってきた。
そこで僕の心に火が点いたね(笑)
もちろん、僕は思い付きで府立大学と市立大学の統合を口に出したのではない。
知事就任の2008年の時から大阪だけでなく日本全体が少子高齢化時代に突入することに強い懸念を抱いていた。大学が地域の活性化に重要な役割を果たすことは認識していたので、「これからの時代、大阪の公立大学はどうあるべきか」を徹底して考えた。
市立大学側は、自分たちの大学は府立大学より上だというプライドを強く持っていたが、そんなプライドは所詮胃の中の蛙的なもの。まさに「虫の眼」の視点だ。世界をリードしていくという気概を全く感じられなかった。これは府立大学も同じ。
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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》Vol.224(11月17日配信)の「本論」から冒頭部分を抜粋したものです。もっと読みたい方は、メールマガジン購読をご検討ください。今号は《【総括・大阪都構想(2)】なぜ府立大・市立大統合、市営交通民営化という「超難関改革」を実現できたか》特集です。