きれいに洗われた豆腐パックが何十個と積み重ねてあった
居住者はある大企業に勤めていたらしい。会社で部署異動や役職が代わるたびに、その年度を付箋に記している。例えば<1990年・××部部長>といった具合に、付箋を貼った自分の名刺をきれいにファイリングしているのだ。押し入れの中にはシャツ購入の際の空箱を利用して、「ネクタイ」「替えボタン」というようにこれまた付箋つきで分類された箱がずらりと並んでいる。しかも1~16までの番号順になっているのだ。
会食で利用したのだろうか、自分が利用したお店の箸袋もスクラップブックに並ぶ。
仕事関係の物以外にも、台所には豆腐パックがきれいに洗われて何十個と積み重ねてあり(写真H)、空き瓶は洗った後に透明なケースに収納されていた(写真I)。2リットルのペットボトルは中がきれいに洗われ、その中にはビニール袋がくるくるとまるまって収まっている(写真K)。
物があふれて生活できなくなる「ためこみ症」という病気
醤油などの調味料、油類などは、牛乳の紙パックを半分にカットしたものをかぶせて、「醤油さし」などと書かれた付箋が貼ってある。醤油も塩も油も、パッケージのままなら付箋は必要ない。なぜわざわざ見えないように箱をかぶせ、その上から付箋を貼るようになったのだろうか。
中尾教授に写真を見せながら尋ねると、「診療していないため、確実なことは言えませんが」と前置きした上で、
「もともとの性格はかなり几帳面で、やや度が過ぎている印象も受けますね。極度の几帳面に、『ためこみ症』を併発した可能性があるでしょう」
そう、家に物があふれて生活できなくなる、「ためこみ症」という病気があるのだ。(続く。第3回は11月9日配信予定)