玄関に高さ190センチ程度のゴミ山があって中に入れない
“家庭不和”が原因とみられるあるゴミ屋敷でも、ションペットが大量に散らばっていた。
清掃にあたったのは暑い夏の日だった。10人近くの作業員がトータルで5日間かけて作業を行うというレベルの、すさまじいゴミ屋敷。私は1日目の作業に参加させてもらったが、実際の現場を見て、よくこれで生活できていたな、と感じた。
玄関を開けると、いきなり高さ190センチ程度のゴミ山があって中に入れない。全員でとにかく玄関のゴミ山を排出しようということになった。何層にも積み重なったゴミはカチコチに固まっていて、一人がクワでゴミをかき出し(写真E-1~E-6)、それを皆が引っ越し用のダンボールに投げ込んでいく。バッサーン、ズッドーンと鈍い音がする。滝のように汗が流れ出るが、強烈に汚れた手ではぬぐうこともできず、目にしみた。
ゴミ山を見ていると、家主が亡くなったのはつい最近だが、ここはもうずっと前から時が止まっていたのがわかる。およそ20年前の週刊新潮や週刊朝日、地下鉄サリン事件を起こす前のオウム真理教が載った新聞(写真F)など、ゴミ山下方の内容物は1995年近辺の物が多い。
家主の息子と血のつながらない後妻という2人の共同生活
「よっぽど地元愛が強いんだなー」
作業員が横浜FCの応援グッズを見て口にする。そうなのだ。タオルや旗、人形、パンフレットなど多岐にわたる応援グッズが大量に出てくる。一度も開封されていない、梱包されたままの応援グッズも多い。
この家は、複雑な家庭環境だった。家主は結婚して2人の息子をもうけた。一人は養子になって他家へ行き、もう一人の子供と妻との3人生活を送るものの妻が病死。その後、家主は今から30年前に再婚をした。しかしまもなく家主が亡くなる。家主の息子と、血のつながらない後妻が残されたわけだ。ちょうどこの頃からゴミがたまり始めたようだ、と石見さんが分析する。
「生活圏が完全にふたつに分かれています。ゴミから判断すると、一階が後妻さんのエリア、2階が息子エリア(写真G)です」
そして息子エリアから大量のションペットが見つかったのだった。