ゴミ屋敷の住人は早逝することが多い。住人がいなくなれば、残るのはゴミだ。その清掃費用は数百万円に上ることもある。もし家族がゴミ屋敷の住人になったとき、あなたはその死をどう受け止めるだろうか。今回はどちらも60歳男性という2つの現場を紹介する——。(連載第4回)
「あんしんネット」の事業責任者の石見良教さん(右端)と作業員のみなさん。撮影のためマスクを外してもらったが、普段はコロナ前から終日マスク姿で作業をしている。
撮影=今井一詞
「あんしんネット」の事業責任者の石見良教さん(右端)と作業員のみなさん。撮影のためマスクを外してもらったが、普段はコロナ前から終日マスク姿で作業をしている。

ゴミ屋敷に住む人は内科的疾患を患っている人が多い

「こんな家に住んでいると、人は死にます」というこの連載第1回第2回は実際に人が死亡した家、第3回はこのままいくと死んでしまう、というタイトルそのものの現場を紹介し、その背景に「ためこみ症」があることにも触れた。もしあなたの大切な人がゴミの中で生活していたらどうするだろう。もしくはあなたがゴミの中で暮らす可能性はないだろうか。

なぜゴミ部屋の中で人は死ぬのか。

実は、ゴミ屋敷に住む人は内科的疾患を患っている人が多く、ゴミの中には大抵薬が埋もれている。つまりは服薬していない。食生活もいい加減なため、糖尿病になりやすい。最終的には合併症を起こし、不衛生な環境で感染症にかかり、早逝してしまう。

【連載】「こんな家に住んでいると、人は死にます」はこちら
【連載】「こんな家に住んでいると、人は死にます」はこちら

生前・遺品整理を手がける「あんしんネット」の事業責任者で、孤独死現場の第一人者でもある石見良教さんがこう話す。

「ああいったゴミがたまるような家に住んでいる人は、自分の好きなものしか食べないですし、よくあるのはアルコールばかり飲んで糖尿病が進んでいるケースですね。そして病院にもかからず、受診した時にはかなり病が重症化していて救いようがない」

ほかに室内のゴミ山から転落死することもあれば、夏季には熱中症で亡くなるケースもある。現場では全く笑えないのだが、室内にはエアコンのリモコンがどこにあるのかさえわからない。第3回は“最もキツイ”と記したが、次に紹介する現場は私を含め、すべての作業員の肉体が数分で限界に達するゴミ部屋だった。

液状の便がこすりつけられ、髪の毛がねっとりと付着

ある猛暑日、東京都内でマンションに一人住まいの60歳男性がゴミの中で死亡した。近隣の住民が「異臭」を訴えて通報し、警察が室内に入ると、部屋で男性が死亡していたのだ。のちに死後1週間と推定された。警察が遺体を運び出した後、室内の片付けにあんしんネットが呼ばれたのだった。

猛暑日に作業をした男性宅。競馬で小遣いを稼ぎ、数年前まで仕事をしていたらしい形跡があった。
猛暑日に作業をした男性宅。競馬で小遣いを稼ぎ、数年前まで仕事をしていたらしい形跡があった。(撮影=笹井恵里子)

ドアを開けた瞬間、すさまじい死臭が漂った。室内空間の5分の4はゴミで埋まっており、壁面のエアコンにまで達している。ゴミ山には液状の便がそこここにこすりつけられ、壁には死亡した男性のものと思われる髪の毛がねっとりと付着していた。

室内にはむんむんとした熱気が立ち込めていた。とりわけ暑いサウナ室にいるようだ。作業員は高さ160センチ以上のゴミ山の頂上と天井の間のわずかな隙間に座って整理するしかない。誰もが“ゆでダコ”のように顔が真っ赤になり、手を上にあげると手袋内の汗がドバーッと流れ出た。

「あっつー」「くっさー」

という作業員のつぶやきがしばしば聞こえる。皆、声に元気がない。

死亡した男性のものと思われる髪の毛がねっとりと付着していた。
撮影=笹井恵里子
死亡した男性のものと思われる髪の毛がねっとりと付着していた。