東京発着分の加わった「GoToトラベル」で旅行業界は活況を取り戻しつつある。しかし、これはいつまで続くのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「数カ月連続の9割減少は自分も初めて見る異常事態。海外ツアーがほぼ開催できないため、GoToトラベルが活況でも各社の業績は厳しい状況が続き、6割程度しか復活できないのではないか」という――。

旅行業界が苦境を切り抜けるために必死のもがき

「GoToトラベル」のキャンペーンは10月1日から東京発着分も加わりました。

私個人に関していえば、このところ、コロナ前ほどではないものの出張仕事が復活してきおり、出張先のホテルなどでは、GoToトラベルの「威力」を肌で感じています。

テレビの生放送番組に月に2回出演し、当社のセミナーも開催していることもあり、大阪への出張が一番多いのですが、8月までは普段泊まるホテルは閑散としていました。私はだいたい同じホテルに泊まり、ほぼ同じ時間(7時半ころ)に朝食会場に行くのですが、8月までは、朝食会場も人はまばらで、何度か泊まったうちの1日は、その時間帯で私一人ということさえありました。

しかし、9月に2日間泊まったときには、朝食会場は一転して、驚くほどにぎやかで、とくに年配の夫婦や女性たちが仲間同士で来ているのが目立ちました。ホテルの人に聞くとGoToトラベルの影響が大きいとのことでした。

大阪以外の地域への出張も徐々に増えているのですが、ホテルは結構にぎやかさを取り戻しています。

本稿では、GoToトラベルに関連して、旅行業界の現状を分析します。

本当にGoToトラベルで旅行業界は苦境を切り抜けられるのかということです。今回は、業界大手のHISとKNT-CTホールディングス(近畿日本ツーリスト、クラブツーリズム)の2社の数字を検討してみます。

4~6月は9割以上減と危機的状況

図表1は「旅行取扱状況」の数字です。観光庁が毎月発表しているものですが、コロナの影響が深刻化し始めた2月ころから、前年比で大きく落ち込むようになり、とくに緊急事態宣言が出た4月以降、6月までは90%以上減少する危機的状況でした。7月は少し戻したものの、やはり極めて少ない状況です。旅行会社にとっては、売り上げが「蒸発した」と言ってもいいような水準です。

経営コンサルタントを長くやっていますが、売上高が数カ月以上にわたって9割も減少することは、明らかに異常なことです。この状況が長引けば、どんなに堅固な財務体質を誇る企業でも、無傷でいることはありえません。

2019年にインバウンド旅行者は3200万人に達し、2020年は東京オリンピックも予定されていたことで、業界としては一気に大台の4000万人を目指していました。しかし昨年比99%減という月が続き、訪日客も消失している状況です。

こういう状況に対し、政府は、GoToトラベルで旅行業界の苦境を救おうとしているのですが、果たしてどれだけ旅行会社を救えるでしょうか。