大きな業績ダウンのANA、JAL、JR東日本、JR東海
新型コロナウイルスの影響を多くの企業が受けていますが、もっともダメージの大きい業種のひとつが航空・運輸です。今回は中でも「減少率」の大きいANA、JALとJR東日本、JR東海の現状と危機対応の状況を、各社の損益計算書や貸借対照表から見ていくことにします。
改めて各社の業績を確認しました。惨憺たる状況です。
図表1は、ANAの直近の第1四半期(2020年4~6月)の売上高・売上原価・販売費および一般管理費、営業利益を記載したものです。大幅に業績を悪化させているのが分かります。
少し詳しく見ていくと、売上高が、2019年の同時期と比べて3789億円減少しています。これは、率にすると75.7%という信じられないほどの数字です。売上高の4分の3がなくなったということです。とりわけ旅客収入の落ち込みは86.5%に達しました。
ライバルのJALはどうかといえば、売上高が前年同四半期と比べて78.1%減で、営業利益も1282億円の赤字という状況ですが、自己資本比率が6月末で45.9%あり、33.9%まで下がっているANAより財務的には少し余裕があります(ちなみに、3月末のJALの自己資本比率は51.2%、ANAは41.4%)。
ANAは1兆円の資金調達済だが、1年で尽きる恐れが
ANAはコロナ危機を乗り切るため、航空機運航に関わる燃料費や人件費などの売上原価を、前年同期に比べて1637億円減少させ、それ以外の通常経費である販売費および一般管理費(販管費)も400億円減少させました。
ただ、同期間の(親会社株主に帰属する)純損失は1088億円と巨額です。自己資本比率も、先に述べたように落ちています。33.9%という水準は今のところはまだ安全圏ですが、6月末での純資産は9743億円と、3月末に比べて1000億円弱減少しています。
こうした危機の時は、自己資本比率とともに現預金などの自分でコントロールできる資金(手元流動性)の確保が大切です。こちらは、借り入れ枠を含めて1兆円近くを確保しており、当面の資金繰りには心配ありません。
ただ、コロナウイルスの感染拡大の状況が変わらず、月に1000億円程度の資金流出が続くと、1年後には、自己資本比率の減少と相まって、資金繰りが厳しくなる恐れがあります。
その際には、JALとの国際線の統合を模索しなければならないかもしれません。「国際線の統合」と書いたのは、国際線は海外航空会社も参入しているため、独占禁止法の観点からは統合のハードルが低いから。ANA・JALは国内線もしんどい状況ですが、独禁法の関係で国内線の統合は難易度が高いと考えます。