ほぼ雌雄を決したアメリカ大統領選。トランプの敗北理由は何だったのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「トランプ氏はコロナに負けました。大統領就任後3年間で非農業部門の雇用が660万人増加しましたが、2020年3、4月だけで2200万人も減り、今も元には戻っていません。前回選挙では、所得の低いプア・ホワイトと呼ばれる白人層が支持しましたが、ツイッターでの暴言や分断を引き起こす発言など強権的・独断的な政治姿勢がそっぽを向かれた形です」という——。

強権的な政治姿勢とコロナ対策が経済後退に影響

米大統領選挙の開票は混乱をきたしましたが、ジョー・バイデン氏が勝利というかたちでほぼ決着しました。ドナルド・トランプ氏の敗因は、強権的・独断的な政治姿勢への批判とともに、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の後退が大きく影響したことは間違いないでしょう。

とくに、雇用が急激に悪化したことが大きいと考えられます。トランプ氏はコロナに負けたともいえるのです。

7~9月のGDPは急回復したが、元の水準にはほど遠い

図表1はトランプ氏就任後の2017年から2019年までの3年間とその後の四半期ごとの実質GDPの成長率です。トランプ氏が就任してからの経済成長は比較的好調でした。2008年のリーマンショック、それに続く世界同時不況以降の経済成長をトランプ政権も維持してきたからです。大統領就任後の成長率は、安定的に2%台を維持していました。

しかし、コロナウイルスの影響が出始めた今年の1~3月期以降は、大きく下がりました。とくに影響が大きかった4~6月はマイナス31%と空前の落ち込みとなりました。そして、大統領選挙を控えた経済政策や、経済活動の再開もあり、7~9月は33%と大きく反転しましたが、元の水準には大きく及びません。

四半期のGDPの成長率をどう計算するかというと、「前四半期に比べて年率でいくら変化したか」を表しています。少しややこしいかもしれませんが、「前年同期比」でないことに注意が必要です。前の四半期に比べての上昇率を年率で示しているのです。

ですから、7~9月に年率で33%上昇したからといって、それまでの2四半期大きく落ちていることから、コロナ前の水準には大きく及ばない水準です。GDPは給与の源泉ですから、それがいまだに大きく落ち込んだままなので、経済は弱いと言わざるを得ません。