コロナ禍でボーナス不支給の企業が増える中、月給も2019年同月に比べて減る業種が続出している。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「厚生労働省が毎月発表するデータをチェックすると、もともと低い月給の業種がさらに下がる一方、高い業種は増えるという皮肉な結果だった」という——。
コロナで給与減少の業種が多い中、増えている業種もあった
2020年の日本経済は、新型コロナウイルスの影響で年初から大きな影響を受けました。とりわけ雇用情勢は一気に厳しくなり、給与が減少している業種が多いのですが、その一方で昨年に比べて給与が増えている業種もあります。
「現金給与総額」というデータが、毎月、厚生労働省から発表されています。この統計は、業種ごと、正規・非正規雇用ごとに実額で給与額が発表されており、よく見てみるとなかなか興味深いです。
2019年前半には求人倍率1.63倍だったが、2020年9月は1.03倍
現金給与総額の数字を分析する前に、日本全体での雇用情勢の変化を見てみましょう。
図表1は、「有効求人倍率」と「失業率」です。有効求人倍率は、厚労省が毎月ハローワークでの求人票と求職票から割り出している数字です。この有効求人倍率が2018年度には1.62倍、2019年前半には1.63倍まで上昇しました。つまり、100人仕事を求めている人に対して163人分の仕事があったということです。日本全国で、場所と職種と賃金を選ばなければ、必ず仕事が見つかったということです。
しかし、2020年に入って、新型コロナウイルスが猛威をふるうにしたがって、雇用情勢は一変しました。どんどん有効求人倍率は落ち、9月には1.03倍まで落ちました。10月は少し戻していますが、それでも1.04倍です。失業率も3%を超える水準まで上昇しています。
別の統計を見ると、製造業での悪化が著しく、人余りと感じている企業も増えています。もちろん、運輸、旅行関連の業種や飲食業でも人が余っている企業も増えています。