コロナ禍で高給の業種はさらに増加、薄給な業種はさらに減少

図表3は業種ごとの現金給与総額です。

業種ごとの現金給与総額

この図表を見ると、結構興味深いことに気づきます。

講演などで「一番給与の高い業種は何ですか」と質問をすると、「金融ですか?」という回答が多いのですが、正解は「電気・ガス業」です。

図表は2020年の9月の給与ですが、他の月もたいてい「電気・ガス業」が最高(※)。この月で、40万円を超えたのはこの業種だけ。次いで、「情報通信業」「学術研究等」「金融業、保険業」と続きます。いずれも38万~39万円台です。

※図表では、左側がパートも含めた「全体:事業所規模5人以上の企業の非正規・正規社員の合計」、右側がそのうち正規雇用の「一般労働者」

こうしたデータはパートタイマーなどの非正規の人を調査対象に加えると数値が下がりますが、正規雇用者に該当する「一般労働者」をみても、「電気・ガス業」が45万6347円で一番です。

一方、最も低いのは「飲食サービス業等」で「全体」で平均11万3456円です。パートやアルバイトなど非正規雇用者が多いので数値が抑えられ気味ですが、正規雇用者の「一般労働者」の数字でも25万4072円と全業種の中でも最低です。

全業種の中で最低「飲食サービス業」の正社員は月給マイナス6.5%

そうした厳しい状況で、前年比の増減もチェックすると、コロナ禍であるにもかかわらず、給与が上がっている業種もありました。

同じ図表3を見ると、もともと給料の高い「電気・ガス業」がさらに上がっています。パートなどを含めた「全体」も、正規雇用者の「一般労働者」も両方上がっています。インフラ産業はコロナや不況が影響しにくいことが改めてわかりました。また、「金融業、保険業」も「全体」「一般労働者」ともに0.4~0.5%上昇しています。

今回の調査で顕著だったのは、上昇している業種は1%に満たない上昇率のところが多かった半面、下落した業種では、その下落幅が大きいということでした。例えば……。

●「飲食サービス業等」
全体11万3456円(マイナス4.5%)
一般労働者25万4072円(マイナス6.5%)
●「建設業」
全体35万9799円(マイナス3.5%)
一般労働者37万4096円(マイナス3.1%)
●「製造業」
全体31万656円(マイナス1.8%)
一般労働者33万9714円(マイナス2.1%)

「飲食サービス業等」のように、給与の低い業種の給与が下がっていることは皮肉なことです。政府はこの現実を直視し、コロナ対策を万全にしつつも、的確な政策を打たなければならないことは言うまでもありません。とくにコロナの感染拡大で雇用が不安定となっている給与の低い非正規雇用者への支援が必要です。

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