2月15日、日経平均株価が30年ぶりに3万円台に回復した。実体経済との乖離が懸念されている。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「コロナ対策と経済活性化のトレードオフなど、政府はメリハリのついた配分ができていない。今後も無能さを露呈し続けるなら、国民が政権を見限るのもそう遠くはない」と指摘する――。

株価は30年ぶりに3万円に回復も実体経済との乖離が大

2月7日までの予定だった11都府県への緊急事態宣言が栃木県をのぞき延長されました。その効果もあり、新型コロナウイルスの第3波も抑えられつつあります。また、2月15日には日経平均株価が30年ぶりに3万円台に回復しましたが、実体経済との乖離が懸念されます。

コロナ禍の経済統計を見ていると、感染を抑えようとして経済活動を抑制すると景気が急に落ち込み、逆にそれを緩めると経済活動が活発化するのが端的に読み取れます。

感染拡大防止と経済活動というトレードオフのバランスをどうとるかが難しいところですが、今の政府でそれができるかは不安なところです。

引き締めれば急速に落ち、緩めば伸びる経済

図表1を見てください。

経済の最前線で景気を敏感に感じる人たちから景況感を調査している「街角景気(景気ウォッチャー調査)」の数字です。景気を敏感に感じている人たちとは、タクシーの運転手、小売店の店頭に立つ人、ホテルのフロントマン、中小企業の経営者たちなどです。この数字は、こうした経済の最前線で働く人たちに対し、内閣府が各地域で毎月調査しているものです。

この数字の見方は「50」が良いか悪いかの基準です。50を超えていると、景気が良くなっていると答えた人が多く、50以下なら悪化していると感じている人が多いということです。絶対的な景気の良さではなく、あくまでも方向感を表しているものです。

この数字を見ると、2020年2月以降、急速に悪化しているのが分かります。コロナの影響が景気に大きな影を落としたのです。とくに、第1回目の緊急事態宣言が出た4月は7.9、5月は15.5と大きく落ち込んでいます。この数字は、2008年のリーマンショックやそれに続く世界同時不況、2011年の東日本大震災直後よりも悪い数字です。そこまで景況感は落ち込んだのです。

しかし、その後は大きく回復しています。とくに、10月は50を超えて54.5まで上昇しました。これはここ数年以上なかった数字です。GoToトラベルは7月から開始されましたが、10月1日からは東京発着も解禁になりました。それにより、実際に国内での移動、宿泊が増加しましたが、何よりも感染防止に関する気持ちの緩みが大きくなったと思われます。気持ちも財布の紐も緩み、移動や消費が増えたのです。