経済最前線のタクシー運転手、ホテルマンの景況感は……

しかし、当然のことながらその緩みにより感染が再拡大し、第3波が襲来しました。そのため国も都道府県も「自粛」の呼びかけが強化し、それと同時に再び街角景気の数字は一気に落ち始めました。

先ほども述べたように10月には54.5まで上昇していた景況感も、12月には一気に35.5まで悪化しました。そして、1月には11都府県に緊急事態宣言が出たこともあって31.2とさらに悪化しました。

経済に圧力をかけると感染は減りますが、確実に景況感は落ちるのです。タクシー運転手やホテルマンといった景気ウォッチャーにしてみたら、政府のかじ取りの良しあしで、実入りが激変するのですから、たまったものではないでしょう。

どっちつかずの政策に翻弄される、小売業、旅行業の苦闘

このことは、GDP(国内総生産)の55%程度を支える「家計の支出」、つまり個人消費にも当てはまります。

図表2をご覧ください。

図表2

家計の支出を端的に表す「消費支出2人以上世帯(前年比)」、「小売業販売額」、「旅行取扱状況」を表しています。

こちらも、先の表と同じく、消費税増税直前の2019年9月からのものですが、「街角景気」と同じく、2020年に入って落ち込みはじめ、第1回目の緊急事態宣言が出たあたりから大きく落ち込んでいます。

先ほども述べたように、家計の消費支出がGDPの55%程度を支えているので、これが大きく落ち込むことは景気に大きな影響を与えます。4、5月はそれぞれ前年比で11.2%、16.2%と大きな落ち込みです。その4、5月を含む、2020年4-6月の実質GDPは年率で前四半期比年率29.2%という大きな落ち込みでした。

緊急事態宣言が解除された後は、前年比マイナスが続いたものの、マイナス幅はかなり縮小しています。9月は10.2%とマイナス幅は再び拡大しましたが、これはその前年の9月が消費税増税前の駆け込み需要で大きく伸びたことが影響しています。緊急事態宣言が解除されると経済は伸びるのです。

そして、10、11月は前年比プラスにまで戻りました。こちらも前年は消費税増税による落ち込みがあり、その分、戻りが大きく出がちということもありますが、消費マインドが向上したともいえると思います。しかし、12月は再びマイナスです。

このことは、「小売業販売額」からも全く同じトレンドが読み取れます。また、コロナでとても大きな影響を受けている「旅行取扱状況」ですが、こちらは、緊急事態宣言解除後の戻りはそれほどではありません。それでも、7月にGoToトラベルが始まって以降は改善傾向が見え、東京発着のGoToトラベルが解除された10月以降はその改善傾向が顕著になっていますが、まだ戻りは半分程度です。旅行業は苦しい状況が続いています。