百貨店業界が2度目の緊急事態宣言で崖っぷちだ。最初の緊急事態宣言時(2020年4~5月)の百貨店全体の売り上げは前年比マイナス6~7割だった。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「大手百貨店の自己資本比率は問題ありませんが、売り上げが低迷し続け、地方では閉館も相次いでいる。ネット販売の台頭もあり、従来のビジネスモデルの転換が求められる時期であることは間違いない」と指摘する――。
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緊急事態宣言で厳しい状況の続く百貨店

1月7日に首都圏に緊急事態宣言が出されました。

2020年4~5月にかけての第1回目の緊急事態宣言下では、百貨店は食料品売り場以外を閉店にするところが多く、業績を大きく落としました。

高島屋とJフロントリテイリングと三越伊勢丹の業績

図表1は高島屋とJ.フロントリテイリング(大丸、松坂屋:以下Jフロント)と三越伊勢丹の業績です。

前者2社は2月が決算期で、2020年3~11月までの業績、三越伊勢丹は2020年4~9月までの業績ですが、前年度(2019年度)は新型コロナウイルスの影響が全くない期間、今年度は新型コロナウイルスの影響が大きく出た期間です。

第2回目の緊急事態宣言でさらなる業績の落ち込みか

売上高を見ると、高島屋が29.1%、Jフロントが36.7%、三越伊勢丹が41.8%と大きく減少しています。当然、営業利益への影響は大きく、高島屋が前年度は202億円の利益を計上していたのが105億円の赤字となり、Jフロントは同じく370億円の黒字が184億円の赤字に、三越伊勢丹が138億円の黒字が178億円の赤字になっています。その結果、親会社株主に帰属する純利益も3社とも大きな赤字を計上しています。

ただし、中長期的な安全性を見る自己資本比率を見ると、高島屋33.2%、Jフロント28.1%、三越伊勢丹43.1%と、前年同時期よりは落としているものの、安全性という観点からは、いまのところ全く問題ないといえます。

今回、第2回目の緊急事態宣言が出て、前回ほどの厳しい対応にはならないと考えられます。しばらくは業績が落ち込むことが考えられますが、もう少し長い目での業績の検討も必要です。後半でそのことに触れます。