一流の上司と非一流の管理職は何が違うのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「一流は具体的な数字をもとに考える。一方、ダメなリーダーは『安い、高い』『多い、少ない』といった漠然とした意味合いの『い』で終わる形容詞を多用する傾向がある」という——。

※本稿は、小宮一慶『できる社長は、「これ」しかやらない 伸びる会社をつくる「リーダーの条件」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

浮かんでくる不安な気持ちの形容詞
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話に具体性がなければ、何も伝わらない、変わらない

ダメなリーダーは、漠然としたことしか言いません。例えば、営業成績が良くない部下がいたとします。「もうちょっと頑張れよ」「はい、分かりました」これは、無意味なやりとりの典型です。「もうちょっと」では、何を、どのくらい、どう頑張ればいいのか、まったく分かりません。

ぼんやりしたことしか言わない上司も上司なら、「分かりました」と答える部下も部下です。ただ分かったふりをして、この場をしのごうとしているだけです。お客さま訪問の数を増やすのか、それとも、訪問数を減らしてもいいから、提案力を上げるのか。具体性のある話をしなければ、何も変えていくことはできません。

私がよく大切だと言っている「お客さま第一」や「一歩踏み込む」も同じです。それを言って反論する人はいないので、具体化しないと「思考停止語」になってしまうのです。

形容詞を使わず、数字で考える

会議に出ていると、「もう少し価格が安ければ売れるのに」という話が出ますが、こういう発言が出ると、私は必ず尋ねます。

「もう少し、というのは、具体的にはいくらですか? あと何円安ければ売れるのですか?」

このように、「もう少し」とあやふやな言い方をするクセがついてしまうと、具体的な解決策に落とし込めなくなってしまいます。これが「あと何円」とはっきり数字にできれば、そのためにはどこをどう削る工夫をしたらいいかということを考えることができるようになります。つまり、数字で考えるクセをつけると、話は具体的に進むのです。

これと同じように、競合他社との比較を、どっちが「安い、高い」「多い、少ない」「遅い、早い」といった形容詞だけで語るのも危険です。これだけでは具体的な比較になっていないからです。

いくら高いのか、どのくらい多いのか、どのくらい早いのかというところをきちんとリサーチして数字で表現しないと、どうしていけばいいかという具体的な対応策は考えようがありません。

普段から数字で表現することを意識していない人は、的確な行動ができない人です。だからこそ、具体的にものを考える、とくに数字でものを考える、数字に落とし込んで話をする習慣づけは、経営者にはとても重要です。もちろん、部下にもそうさせるのです。会議で、あいまいな言葉が出たら、「具体的には?」と必ず質問するのです。