※本稿は、小宮一慶『できる社長は、「これ」しかやらない 伸びる会社をつくる「リーダーの条件」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
絵画鑑賞は経営者の「直観力」を磨いてくれる
私は絵画鑑賞が好きで、よく美術館に行きます。私の会社でロンドン、パリの美術館見学をするツアーを企画し、経営者のお客さまたちをお連れしたこともあります。なぜ経営コンサルタントがそんなことをするのか。優れた芸術作品に触れることは、経営感覚を磨くうえで非常に有益だというのが、私の持論だからです。
企業活動が正しく行われ、正しく成果を出しているかどうかは、KPIをはじめ、「数字」で評価することが多くなります。数字は確かに大事なものさしではありますが、数字だけがすべてではありません。何をやるのか、やめるのかの判断をするとき、やはり経営者としての直観がものを言う部分があるわけです。
よく、骨董の目利きになるには「とにかくたくさんいいものを見ることだ」と言いますが、数をたくさん見ているうちに、見る目が養われていくわけです。この「ものを見る目」すなわち「観察眼」「直観力」を磨くのに、優れた芸術作品をたくさん見ることはとても有効なのです。
多くの人々が美しいと思うもの、感動するものを知る
社長というのは、皆さん仕事中毒みたいなところがありますが、芸術に造詣が深く、美術館によく足を運ぶという人もいます。またその一方で、「絵画なんて、私にはまったく分からないです」と言う方も多いのですが、芸術的に絵画の良し悪しを分かろうとする必要はないと私は思っています。世界的に評価の高い絵に触れ、「これが世の中の多くの人が『美しい』と評価する絵なのか」と知ることが大事なのです。
正直なところ、「自分はこれ、あまり好きじゃないな」と思ってもまったく構わないわけです。自分の好き嫌いはどうであってもいい。ただ、「社会の大方の人は、こういうものが好きだ」「こういう絵に感動するのだ」ということを理解する。そのために見るのです。もちろん、自分も感動できればそれは素晴らしいことです。
ビジネスにおいて提供するのは「お客さまに喜んでいただく商品やサービス」です。つまり、世の中の多くの人が求めるものはどういうものなのかに関心を持つことは、経営者の必須スキルであり、絵画鑑賞はこの能力を高めてくれるのです。
「自分の関心を社会の関心に合わせなければいけない」と先ほど言いましたが、自分の趣味嗜好だけでものづくりをしていたら、商売になりません。自分たちがいくらいいと思っていても、世の中のニーズを理解していなければ、社会に貢献できないわけです。