2008年、サザビーズのオークションで村上隆氏のフィギュアが約16億円で落札された。一体なぜそこまでの高値がついたのか。東京画廊代表の山本豊津氏は「村上さんは売れるアートを作る方法を徹底的に研究している。そのひとつがアニメや漫画をアートに昇華させることだった」という。公認会計士の田中靖浩氏との対談をお届けしよう――。(第3回/全3回)

※本稿は、山本豊津、田中靖浩『教養としてのお金とアート 誰でもわかる「新たな価値のつくり方」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

2018年5月、米ニューヨークで開かれたアートフェア「フリーズ」で、大手画廊ガゴシアンのブースに展示された村上隆の作品。
写真=dpa/時事通信フォト
2018年5月、米ニューヨークで開かれたアートフェア「フリーズ」で、大手画廊ガゴシアンのブースに展示された村上隆の作品。

会計のプロなら知っている「価額」という言葉

【田中】私が会計の世界に入って戸惑った言葉に、「価額」があります。これは会計原則にも出てくる言葉なのですが、「価格」とは違うんです。初心者の頃、この価格と価額の違いがわからなくて困りました。テキストにもあまり説明がないし、先生に聞いても明確に答えてくれない。とりあえず「区別が難しいんだ」ということだけは明確にわかりました(笑)。

まず、外部との関わりのなかでついたのが「価格」です。これを使うときには必ず、外部の第三者との取引が存在します。こちらはわかりやすいですね。これに対してわかりにくいのが「価額」です。これは自分の内側で決まる金額です。

たとえば機械を減価償却するとして、定率法と定額法のどちらで償却するかによって減価償却額が変わり、結果として機械の資産金額が違ってきます。同じ資産でも会計処理によって結果として資産の金額が変わる、このように「自分の選択によって金額が変わる」ときは「価額」を用います。つまり「機械の価額」と言った場合には、第三者との取引金額ではなく、会計処理の結果として出てきた金額ということです。

【山本】なるほど、価値と価格の関係が、会計では価額と価格になるのですね。この考え方はアートもまったく同じです。たとえば、ある個人が自分は絵を描きたいと思うとします。すると、その絵を描いているという行為自体は価格でも価値でもない。ただ、社会的に絵を描くという行為が表現手段に加えられているから絵を描くわけです。絵を描くことは本人にとって価値があるので、対社会的な関係がなくても絵を描くことは続けている。その描かれたものを第三者として価格をつけるのが僕たちギャラリーの仕事です。だから、僕たちは価値を価格に変える仕事をしているわけです。