マーケティング的手法を導入したポップアーティスト

【山本】第2次世界大戦後、世界が消費社会に突入すると、価格から価額を考えるアーティストたちが現れました。それがポップアートです。彼らは価格から価値を逆算して考えるマーケティング的手法をアートに取り入れました。そうすると内容が大衆に理解されやすい表現となるわけです。

たとえば村上隆さんもその一人です。彼が書いた『芸術起業論』(幻冬舎)はまさに、ビジネスとしてアートの仕事を捉え、絵をどうやったら売れる商品にできるかを徹底的に書いた本です。マーケットがさきにあることから、大衆が誰でも知っている素材を自分の作品のコンテクストに引用しました。たとえば、アニメや漫画、それから彼が描いた羅漢図です。すでにあるものをアートに昇華させることで、彼の作品は爆発的に高い価格がつきました。

【田中】すでに表現が出し尽くされてしまったなかで、どうやってみんなが欲しがるものをつくるかということ考える、つまり過去の再編集をしたわけですね。

【山本】そうです。それを最初にやったのが、アンディ・ウォーホルらのポップアーティストたちです。マリリン・モンローやエルヴィス・プレスリー、そしてビートルズを作品化しました。すでにあらゆるものがあって、それをアートのなかに落とし込むことを考えたから価値が生まれ、それが高価格になったのです。

「誰もやったことがないチャレンジ」のために歴史に学ぶ

【山本】もう一つの方向があって、それが美術史から学ぶ方向です。マーケティングではありません。マーケティングの手法はその時代の環境や社会状況を踏まえることですが、美術史から学ぶとは、歴史の文脈にのっとって誰もやったことがないチャレンジをすることです。たぶんこれは資本主義の根幹に関わることだと思います。

ダ・ヴィンチやミケランジェロが死んだあと、地中海を中心とする経済が停滞して、100年近く、金利がゼロになりました。そのときに起こったのが、バロックとかロココなどのマニエリスムです。アートは装飾と引用が続きました。

一方、経済面でも新しい資本主義がおこるまで時間がかかった。やっと17世紀のオランダで火がついて、新しい価値観が生まれます。一般の農民を描いたり、王様の発注ではありえない絵画が生まれてきたのもこの頃です。それはいままでにない世界であり、価値観だったのです。