失業給付で労働者を保護する戦略を実施したが……
もちろん、米国では、日本と雇用についての考え方が違い、企業は「レイオフ(一時帰休)」という形で、比較的簡単に従業員を解雇できます。日本では、雇用調整助成金のような形で、失業を極力減らし、企業内に実質的な失業者をとどめる考え方ですが、米国では、企業負担を極力減らすために、解雇を認め、その代わりに失業給付などで政府が失業者を保護するという政策が採られます。
今回のコロナの状況においては、通常の失業手当に加えて、かなり大きな額の追加支給があったため、人によっては、働いている時よりも収入が多いということも生じました。これはトランプ氏の大統領選対策でもありました。
その後、景気が回復するに従い、企業は、レイオフした人の再雇用に向かっていますが、5月から10月までの数字を足しても1207万人で、3月、4月で失った雇用の合計2216万人には遠く及びません。いまだにコロナ前と比べて1000万人ほどの雇用が減少したままなのです。
失業給付が普段より多く出ると言っても、それがいつまで続くかもわからず、場合によっては、失業状態が長く続くという大きな不安を抱えていては、やはり政権への批判は高まります。
言いたい放題ツイッターを来年1月に凍結される?
ここまで見たように、新型コロナウイルスが蔓延するまではトランプ政権の経済運営は、GDP、雇用数という観点からは、それなりに順調で合格点だったと言えます。
それが、コロナの影響で大きく反転してしまっていたのです。もし、コロナがなかったらという議論はしてもムダなことですが、コロナがなかったら、今回は僅差でバイデン氏が勝利した州でもトランプが勝利し、大統領選挙の結果も変わっていたかもしれません。
とはいえ、すでに雌雄は決しました。
「ブルームバーグ」(11月6日)は、これまでツイッターでさまざまな暴言をまき散らしたトランプ氏が1月に大統領職を退いた後も同じ調子で物議をかもす内容のツイートをした場合、違反ツイート認定されて削除され、アカウントの一時的な凍結や停止、さらには恒久的な禁止となることもあり得る、と報じています。
現在は、問題ある内容でも「米大統領」として特別扱いを受けていますが、来年1月、「元大統領」になったらその措置も打ち切られるのです。
バイデン氏は政権移行の準備を始めました。
米民主党はこれまでコロナ対策にはどちらかというと経済よりも感染防止に動きがちでした。選挙時、バイデン氏は2兆ドルの公共投資を打ち出していましたが、コロナが拡大の勢いを見せている中で、当面はコロナ対策と経済対策という難しいかじ取りを迫られることは、間違いがないでしょう。