※本稿は、横江公美『隠れトランプのアメリカ コロナ感染から奇跡のカムバックでトランプが勝つ⁉』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

「今の外交政策は時代にそぐわない」

バイデン政権が誕生したら、日本にはどのような影響が出るだろうか?

2020年10月25日の日曜礼拝で、孫娘のナタリー・バイデンと一緒に歩く民主党大統領候補のジョー・バイデン。ウィルミントン、デラウェア州にて
写真=AFP/時事通信フォト
2020年10月25日の日曜礼拝で、孫娘のナタリー・バイデンと一緒に歩く民主党大統領候補のジョー・バイデン。ウィルミントン、デラウェア州にて

バイデン政権がどんな政策を行うかを知るには、進歩系シンクタンクのアメリカ先端政策研究所にアプローチするのが一番早い。オバマ政権の政策理論を支えたシンクタンクである。

外交政策のトップには興味深い調査リポートが掲載されている。そのタイトルは「アメリカの漂流:アメリカ人が望んでいる外交政策」だ。この調査リポートでは、明確に「冷戦時代とポスト冷戦時代を背景にした今の外交政策は時代にそぐわない」と結論づけている。

民主党系として有名なシンクタンクの調査は民主党寄りの報告を行うのが一般的だ。メディアでも同じだが、CNNは民主党に甘く、FOXは共和党に甘い。にもかかわらず、上記リポートでは外交政策に対する調査回答者のスコアをもとに、「トランプ・ナショナリスト」(共和党系)が33%、「グローバル活動家」(民主党系)28%、「外交政策からの離脱」21%、「従来型の外交政策」18%とセグメントしている。

「外交政策の離脱」は無所属に多く、「従来型」はベビーブーム世代に支持者が多く共和党と民主党の両党に跨がっている。驚くべきは共和党を支持するトランプ・ナショナリストの多さと、「外交政策の離脱」を唱える人の多さだろう。

ロシアを脅威と感じる民主党支持者

最も多くのアメリカ人が外交政策を通じて求めているのは「アメリカの国土がテロに狙われないこと」で、次いで「アメリカの民主主義を守ること」と報告している。3番目が「アメリカの雇用を守ること」で、4番目は「アメリカ企業の製品が市場で売れること」、5番目にようやくバイデンの外交政策につながる「国家間の協力」が入る。ただし、その目的は気候変動、貧困、病気というグローバルな問題の解決だ。

6番目に「人権問題への対処」が入り、7番目が「国境の強化」、8番目が冷戦とポスト冷戦時代の旗印であった「民主主義を伝える」という順だ。トップ7は、ポスト冷戦時代の概念がすでにアメリカの多数の人から失われていることを示している。

党派別に見ると、7位の国境強化が共和党系の間で2番目に関心が高く、民主党支持者の間では5番目の気候変動や貧困のための国際協力と6番目の人権問題への対処への関心が高い。トランプとバイデンの外交政策そのままの結果である。

さらに細かく見ていくと、民主党系の多くがロシアを脅威と感じていることが記されている。ロシアを脅威と感じているのは全体では27%にすぎないが、民主党系に限ると41%にもなるのだ。民主党系がロシア以上に関心を寄せているのは、気候変動と同盟間の協力である。

核の脅威については、共和党系は4割近くが問題だと回答しているが、民主党系は2割超える程度だ。無所属は民主党系よりも少ないが同様に2割を超える程度である。