これから日本の経済はどうなるのか。株価はコロナショック以前に戻りつつあるが、実体経済の先行きは不透明だ。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「今後、デフレに再突入する懸念がある。テレワークの浸透で10月からオフィス賃料も下がりそうだ。バブル気味だった不動産は大打撃を受ける恐れがある」という——。
空っぽの部屋から望む星空ときらびやかな街の風景
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日本経済、世界経済は5月上旬にいったん底を打ったが……

このところ、日米欧の株価が上昇基調です。本稿の執筆現在(6月12日)日経平均は2万2000円台、NYダウも2万5000ドル台に回復しました。ドイツの株価指数DAXも5月半ばに10000を割っていたのが1万2000超まで戻しています。

新型コロナウイルスの影響で、実体経済はまだ元の状態からはほど遠い状況ですが、株価だけは上昇しています。

大きな理由は、日米欧の各中央銀行が、市中にじゃぶじゃぶに資金をつけ、日本、欧州同様、米国でもゼロ金利政策をとっているということがあります。

もう一つは、景気の回復期待感です。新型コロナウイルスで「大恐慌以来」と言われるほどに落ち込んだ世界経済ですが、そこにわずかばかりですが、回復の兆しが見えてきたのです。

この状況を端的に表しているのは、本連載でも何度か取り上げた「街角景気」でしょう。「景気ウオッチャー調査」ともいわれますが、内閣府が、タクシーの運転手、小売店の販売員、中小企業経営者などに各地で調査をして指標化しているものです。「50」が良いか悪いかの基準です。

街角景気(=景気ウォッチャー調査)

「景気ウオッチャー調査」2月27.4→3月14.2→4月7.9→5月15.5

昨年10月の消費税増税後の数字も「50」を大きく切って悪かったのですが、コロナウイルスの影響が出始めた2月に、「27.4」と大きく落ち込みました。その後、3月には、この統計を取り始めた2002年以来最低の「14.2」まで下がりました。リーマンショックや東日本大震災直後よりも悪化したのです。4月にはさらに下がって「7.9」と悲惨な状況でしたが、5月は、非常に悪い数字ながらも、「15.5」に戻りました。

つまり、最悪の状況が続いていながらもわずかですが反転したのです。

緊急事態宣言が5月25日に解除されて以降、制限があるものの飲食店が再開し、百貨店も開店しました。しかし、力はまだまだ弱いと言えます。この状況と、この「15.5」という数字は感覚的にはおおむね符合しています。