デフレ再突入の懸念が台頭、不動産価格は下落へ

しかし、別の問題がこれから大きくなる可能性があります。それはデフレです。私はそれにともなう地価の下落も懸念しています。図表は、日本や米国などの消費者物価の推移です。

日本では、4月に「前年同月比-0.2%」とマイナスを記録しました。短期的には原油価格の下落の影響が大きいですが、コロナウイルスの影響で、世界の物流が滞り、消費も低迷していることを考えると、この先デフレに陥る懸念があります。

日本や米国などの消費者物価の推移

実際、日本だけでなく、米国も今年1月は「同2.5%」だったものが4月には「同0.3%」まで下がっており、ユーロ圏も0%に近づいています。アジアでは、台湾やシンガポールは、4月の時点で物価はマイナスとなっています。

日本は、アベノミクスの前に長らくデフレを経験しましたが、デフレは物価下落を通じて、企業収益を下押しし、それが賃金の下落をもたらし、さらにそれが物価を下落させる「デフレスパイラル」という悪循環をもたらす懸念があります。

その際に私が懸念しているのは地価の下落です。デフレ下ではそれが起こりやすいのです。また、日本の人口が大きく減少し始めている中、外国人の投資などがなければ、その傾向は長期化する可能性があります。

地価とも関係しますが、京都や大阪ではホテルバブルが崩壊しています。多くの方は、コロナウイルスの影響で外国人観光客が減ったことが主な原因と考えているかもしれませんが、実際は供給過剰がバブル崩壊の本質です。

京都ではここ数年で客室数が50%も増えたと言われています。訪日客を当て込んで、客室数が増加したのですが、そもそもそれでは経営は成り立ちません。ホテルの採算ラインは、客室の稼働率がおおよそ70%程度ですが、客室数が一気に50%も増えれば、もともと90%程度の稼働があったとしても、おしなべて赤字となります。大阪も同じです。

実際、昨年のホテルの料金は、コロナウイルスの影響がなかったにもかかわらず、京都では大幅下落でした。そこにコロナショックがおおいかぶさったのです。各ホテルはたまったものではなく、京都では財務力の乏しい一部のホテルや民泊では、早々と倒産や廃業が発表されています。

テレワーク定着でオフィス賃料↓タワマンなどマンションバブル崩壊か

東京で心配なのは、オフィスビルです。コロナウイルスの影響で一気に「働き方改革」が進みました。一部の経営者は、ウイルス騒動が終わっても、在宅勤務が増えた状況を戻さないと言っています。ましてや、収益が落ちた企業が、オフィスを増やすことなど考えられません。一部では、10月から大きく賃料が落ちるともいわれています。なぜ、10月なのか。これは不動産業界の慣例で、半年前にオフィスの退去を通告することが多いですが、4月に現在のオフィスの退去を通告した企業の影響が10月から出始めるということです。

ホテルの稼働も落ちており、当面は回復が鈍いことは明らかです。東京オリンピックも無観客にするという話も出ています。

当然、オフィスやホテルの稼働が落ちれば、タワーマンションを含めてバブル気味だったマンション価格にも影響が及ぶことは必至です。

先ほども述べたように、日本は人口減少国家です。ここ数年、不動産価格は上昇基調でしたが、常識的に考えて、それが長期的に上昇し続けることは考えにくいのです。それが、今回のコロナショックで、「現実」に戻る動きが早まったとも言えます。

いずれにしても、今後の景気の動向とともに、デフレが起こるのかどうかや不動産価格の状況を注意深く見ていかなければなりません。

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