米国の4月の雇用減少は、過去に類を見ない「マイナス2068万人」

米国でも、同じような兆候が見えます。一番端的に表しているのが米国の雇用状況でしょう。前回にも説明しましたが、「非農業部門雇用増減数」という数字に世界中のエコノミストたちが注目しています。図表2は、その数字と、失業率、さらには時間当たり賃金を表しています。

米雇用統計

米国では、「雇用」が経済の調整弁の働きをし、企業の業績が悪化すると、雇用が一気に減ります。「レイオフ(一時帰休)」という形をとることが多いのですが、4月の雇用の減少は、過去に類を見ない「マイナス2068万人」でした。リーマンショックとそれに続く世界同時不況でも、その間減少した雇用数は合計で836万人でしたから、この4月の減少数は「超」がつくくらいの大変な数であることがわかります。

失業率も3月4.4%から4月14.7%と一気に10%以上も上昇しました。ということは、働いている人の1割が雇用を失ったということです。

雇用が減少したのは「比較的賃金の低い人たち」

その際に注意してみなければならないのは、時間当たり賃金です。これは、実は、4月は3月に比べて4.7%上昇しています。つまり、これまでにないくらい雇用数が激減し、失業率が上昇する中で、時間当たりの賃金が前月に比べて大幅に上昇しているということは、雇用が減少したのは「比較的賃金の低い人たち」ということを表しています。このことが、今回全米で起きた暴動とも関係していると私は考えています。

一方、5月は、大方の予想に反して、250万人の雇用増です。4月からさらに減少すると予想されていたのですが、増加に転じました。このことが、NYダウが大きく上昇したひとつの理由です。失業率13.3%とわずかに下がりました。時間当たり賃金は前月に比べて下がっています。

消費者の感覚を表す「消費者信頼感指数」と、企業の景況感を表す「米ISM景気指数」も4月に大きく落ち込んだ数字が、5月には下げ止まっています。

コロナの感染がまだまだ予断を許さない米国の状況ですが、政府が経済回復に重点を置き始めた効果が5月には少しですが出てきているということです。日本も米国も、経済の実態はまだまだ弱いと言えますが、急激な落ち込みはいったん底を打ったと思えます。