日本経済はどこまで落ちていくのか。7月1日に公表された日銀短観は、大企業の製造業は「マイナス34」、非製造業は「マイナス17」と景況感は大きく落ち込んだ。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「日本経済は4~6月の深い底から少しずつ回復していくはずですが、その回復度合いはかなりスローになりそうです」という――。

景況感は大きく落ち込む

東京では新型コロナウイルスの新規感染者が再び増加しています。この先、感染者数がどのように動くかはなかなか予測が難しいですが、いずれにしてもワクチンや特効薬ができるまでは、しばらくは「ウイズコロナ」の期間を過ごしていかなければなりません。

そうした中、7月1日に、現状の企業経営の状況を的確に表す「日銀短観(日本銀行の全国企業短期経済観測調査)」が公表されました。日本銀行が3カ月に一度、1万社近い企業を調査し、その状況を詳細に調べているものです。今回は「6月調査」でした。

その数字は、後述するように目を覆いたくなるようなひどい数字だったわけですが、最初にこの短観の見方をごく簡単に解説しましょう。

短観は企業の景況感で「良い」と答えた企業のパーセントから「悪い」と答えたパーセントを引いたものです。全員が「良い」と答えると「プラス100」、全員が悪いと答えると「マイナス100」です。「さほど良くない」という答えも認めています。

今回の景況感を理解するには、まずこれまでの短観の流れを見ておくことが必要です。

図表1は、2017年からの大企業製造業と大企業非製造業の景況感の推移を表したものです。

まず、大企業製造業の数字を見ると、ピークは2017年12月調査です。「プラス25」という数字です。これは、とても良い数字です。というのは、先ほども説明したように、短観では「さほど良くない」という答えも認めているので、「プラス25」というのは、その「さほど良くない」を除いた「良い」と答えた人のパーセントから「悪い」と答えたパーセントを引いているからです。ここまでは、大企業製造業の景況感は上がってきていました。

しかし、注意して見なければならないのは、その後、2018年、2019年と、その数字がどんどん悪くなっていることです。2019年9月調査では「プラス5」まで落ちていますが、この調査時点に注意が必要です。2019年9月というのは、消費税が8%から10%に上がる直前です。その時、大企業製造業の景況感はかなり落ちていたということです。

もちろん、中堅企業や中小企業の製造業の景況感も落ちていました。米中摩擦などにより、世界経済、とくに中国経済が減速傾向を強めていたことが大きな理由です。

一方、表の非製造業の景況感を見てください。2018年に「プラス24」を2度つけましたが、2019年に入ってもそれほど落ちず、消費税増税後の2019年12月調査でも「プラス20」です。増税後に「0」まで落ちた製造業とは大きな差です。飲食業、ホテルなどの非製造業は、インバウンドの観光客などの増加により、当時はかなり潤っており、人手不足感も非常に強かったのです。

それが、2020年の3月調査になると、製造業が「マイナス8」ととうとうマイナス圏に突入し、そして、好調だった非製造業も「プラス8」と前回調査よりも12ポイントも一気に下落しました。新型コロナウイルスの影響が大きく出始めたのです。

そして、今回の6月調査では、大企業製造業では、マイナス幅が拡大し、なんと「マイナス34」まで沈みました。リーマンショックに匹敵する落ち込みです。

非製造業は、「マイナス17」です。こちらも大きく落ち込みました。製造業、非製造業ともに非常に厳しい状況に追い込まれていることが分かります。製造業・非製造業の数字から言えること。それは、日本経済は完全な「不況」の状態にあるということです。