リニア新幹線の建設に影響が出るか

最後に、リニア中央新幹線(中央新幹線)について触れておきます。

JR東海の貸借対照表を見ると、流動資産に、「中央新幹線建設資金管理信託」という勘定科目があり、6月末で、2兆4350億円が計上されています。

一方、負債の部には固定負債として「中央新幹線建設長期借入金」がちょうど3兆円載っています。これは、リニア中央新幹線建設に関して、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構がJR東海に貸し付けたものです。

もともとJR東海は独自でリニア中央新幹線を建設し、2027年には品川―名古屋間を、2047年には大阪まで延伸する計画でした。名古屋まで開通した後、大阪まで延びるのに20年もの期間を見ていたのは、毎年6000億円程度の営業キャッシュ・フローを稼ぐJR東海でも、名古屋までのリニア新幹線建設に5兆円強、大阪までだとさらに4兆円近くかかる資金の負担は重く、名古屋までの開通後は、10年間の「資金の踊り場」をつくり、そこで大阪への延伸のための資金を確保しようと考えていたからでした。

しかし、政府がアベノミクスの一環として、3兆円の資金提供を行い、大阪延伸計画が10年早まった(2037年)という経緯があります。

JR東海は今回のコロナウイルスの影響で資金的に大きな影響を受けただけでなく、水資源の影響を懸念する静岡県との協議が難航しており、2027年の品川—名古屋間の開通も遅れる見通しです。今後、コロナの影響によっては大阪までの開通も遅れる可能性がありますが、熱狂的な新幹線ファンとしてそうならないことを切に願っています。

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