経済低迷、少子化……ニッポンには一筋縄ではいかない問題が山積している。だが、国民がやせ細る中、政治家は粛々とパーティーに明け暮れていた。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「中長期的な大問題を抱える日本を変えるためには、国民はもっと政治に厳しい目を持ち、大きな視野や見識を持つ人を選ぶ必要がある」という――。
平年劣化でだいぶ塗装が剝がれ落ちている日の丸
写真=iStock.com/Jorge Villalba
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これでは何も変わらない

この国の経済が「失われた30年」と言われていることは皆さんもご存じだと思います。

皆さんの会社が作り出す付加価値(「売上高」から「仕入れ」を引いたもの、給与の源泉)の合計である名目国内総生産(GDP)は、コロナ前には約555兆円で、最近では600兆円程度です。

一見「成長している」ように見えますが、ドルベースで見ると様相は一変します。コロナ前の為替レート(1ドル=110円程度)で見ると5兆ドル程度だったものが、現状の155円程度で換算すると4兆ドルを切る水準。たった数年間のうちに20%以上も激減したことになります。

日本は輸入のかなりの部分がエネルギーで、その大半はドル建てで決済されていますから、ドルでの稼ぎや購買力が大幅に減少しているということです。国力が大きく落ちているのです。

もう少し長い視点で、日中を比較してみましょう。2010年にドル建てでの名目国内総生産で日本は中国に抜かれました。この頃は、2008年のリーマンショック後にギリシャ危機などの円高もあって、日本も中国も6兆ドル弱の名目国内総生産がありました。

さて肩を並べていた両国は今、どうなっているか。中国はこのところの元安があるものの、それでも約17兆ドルの名目国内総生産があります。4兆ドルを切る水準の日本の4倍以上も多いのです。

さらに長い期間で、今度は日米比較をしましょう。米国の1990年の名目国内総生産は約6兆ドルでしたが、現状では28兆ドル程度です。日本は、その90年代初頭とそれほど変わらないという惨憺たる有り様で、格差は文字通り天と地ほど広がっているわけです。

これには、バブル経済や冷戦構造の崩壊、財政赤字の増加や人口減少などの原因がありますが、この間、政治の経済活動への有効性が大きく落ちたことも、間違いのない事実です。大金を一気に失うことを俗に「溶かす」と表現することがありますが、政治家は30年間永田町界隈で懸命に働いていたのでしょうが、結果的に巨額の国益を溶かしたのです。