米国では11月5日に大統領選挙、日本では9月27日に実質的に次期首相を決める自民党総裁選が行われますが、政府からの独立性を標榜する中央銀行の金融政策、とくに金利の上げ下げには選挙の日程や選挙への思惑がある程度考慮されると私は考えています。
本稿では、現状の米国や日本経済の状況を考察しながら、中央銀行の思惑と選挙との関係を考えてみます。
米国は利下げへ
先日行われた米ワイオミング州ジャクソンホールでの世界中の金融関係者が集まった会合で、米国の中央銀行であるFRBのパウエル議長は利下げについて言及しました。そのため、9月17日、18日に開かれるFOMC(公開市場委員会:日銀の政策決定会合に当たるもの)で利下げを行うことはほぼ確実です。そのため為替市場は円高方向に進んでいます。この原稿を書いている時点では143円台です。
9月6日には、市場が注目していた8月の米雇用統計が発表されました。失業率は先月の4.3%からわずかに改善して4.2%。また世界中のエコノミストが注目する非農業部門雇用者数は14万2000人の増加で比較的低い数字だった上に、前月分も8万9000人に下方修正されました。
米国では失業率が3%台だとほぼ完全雇用と考えられます。失業者には転職待ちをしている人も含まれ、米国では比較的雇用の流動性が高いためです(ちなみに日本では2%台の失業率だと完全雇用と考えられています)。4.2%は少し景気が落ちていると考えていいでしょう。
また、非農業部門の雇用の増減数では、毎月20万人くらいの増加が、経済が安定して拡大しているとみなされることが多いのですが、こちらの数字も少し陰りが出ています。ただ少し見方を変えれば、大方が予想する程度の景気のスローダウンとも言えます。
一方、消費者物価の上昇率も2%台後半と、FRBが目標としている2%程度よりは幾分高めであるものの、比較的安定していることから、9月のFOMCでの利下げは確実とみてよく、注目は、下げ幅が0.25%なのか0.5%なのかということです。
予想に近い形の景気のスローダウンなので、0.25%の利下げ予想が多いですが、インフレ再燃の懸念が遠のき、景気を刺激するなら0.5%が妥当でしょう。そして大統領選挙への影響も考えなければなりません。