今年11月のアメリカ大統領選挙は、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領が対決する。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「これで高齢者同士の『老老対決』は回避できた。日本でも『ポスト岸田』をめぐり麻生氏と菅氏が『老老代理戦争』をしているが、そんなことをしている場合ではない」という――。
ドナルド・トランプ大統領(2017年当時)と岸田文雄首相
ドナルド・トランプ大統領(2017年当時)(写真左=Shaleah Craighead/PD-USGov-POTUS/Wikimedia Commons)と岸田文雄首相(写真右=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

バイデン大統領のように岸田首相も撤退?

「バイデン大統領(81)の撤退表明で、後継候補に女性のカマラ・ハリス副大統領(59)がなったように、日本でも岸田文雄首相(67)が自民党総裁選挙から撤退して、旧岸田派で女性の上川陽子外相(71)を担ぐなんてこともあるんじゃないか?」(自民党旧安倍派衆議院議員)

こんな声が聞かれるようになったのは、バイデン氏が大統領選挙からの撤退を表明し、数日が経過した7月下旬ごろからだ。

旧岸田派の議員に聞けば、「そんなことはありえない。首相は再選に向けて気力がみなぎってるから」という答えが返ってくるのだが、内閣支持率は超低空飛行を続けており、パリ五輪が終わり、お盆も過ぎた後、「不出馬」を表明する可能性も少なくない。

その鍵は麻生太郎副総裁(83)の動きにある。岸田首相が再選に向け正式に出馬すれば、旧岸田派の約40人はまとまる。しかし、自民党に所属する衆参の国会議員票371と地方票371の合計で争われる選挙では、少なくとも麻生派55人の協力がなくては勝てない。

動き出した「タフネゴシエーター」

岸田首相と麻生氏は、6月18日(ホテルオークラ内の日本料理店「山里」)と同25日(帝国ホテル内の鉄板焼き店「嘉門」)で会談して以降、表立った接触はない。

むしろ、麻生氏との接触を強化し、出馬に必要な推薦人20人の確保に動いているのは、トランプ政権時代、通商交渉をめぐってトランプ氏から「タフネゴシエーター」と称賛された茂木敏充幹事長(68)である。

茂木氏は、「トランプ再登板」を視野に、東南アジア4カ国歴訪(7月28日~8月4日)で存在感を示すと同時に、旧茂木派の鈴木貴子青年局長らがセットした若手との宴席に顔を出し、「東大からハーバードで頭が良く、実際に仕事もできるが、気難しくて気を遣う」(経産省官僚)といった負のイメージの払拭と、「『もしトラ』が現実になれば、自分しかいない」という売り込みに努め、麻生氏の支持を得ようと躍起だ。