「ポスト岸田」はトランプ氏と渡り合えるか

もう1人のキーマン、菅義偉前首相(75)は、6月6日、麻布十番の高級寿司店「おざき」に、加藤勝信前厚労相(68)や小泉進次郎元環境相(43)らを集め、事実上、「岸田降ろし」に大きく一歩を踏み出した。

加藤厚生労働大臣と、衆議院議員 小泉進次郎
加藤厚生労働大臣(写真左=厚生労働省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)と、小泉進次郎元環境相(写真右=首相官邸ホームページ/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

筆者は、周辺への取材から、ごく最近まで、菅氏の脳裏には、「加藤首相、石破茂幹事長(67)、小泉官房長官」という青写真があったと見ている。ただ、石破氏は7月27日、鳥取県米子市での講演で出馬に意欲を見せながらも、決断は「お盆あたりが1つの区切り」と煮え切らず、誰を首相に推し立てるか、その動きを加速化できないでいる。

先の麻生氏で言えば、「東大→ハーバード」で、身長186センチと見栄えもいい小林鷹之前経済安保相(49)を、また、菅氏で言えば、小林氏よりも若い小泉氏を推し立てるプランもなくはない。

しかし、「若く経験も浅い彼らが、ディールを好む老練なトランプ氏と渡り合えるのか?」(前述の旧安倍派議員)、「トランプ氏という不安定要素を考えれば、岸田首相のままでどこが悪いのか?」(前述の旧岸田派議員)という声があるのも事実だ。

不死身のトランプ氏にハリス氏が迫る

アメリカ大統領選挙に目を転じれば、7月14日の銃撃事件で得たトランプ氏の勢いは、ハリス氏の表舞台への登場によって止まったと言っていい。

「事件直後の共和党大会は、これまでに見たことがない熱狂ぶりで、トランプ支持者ではない党員まで彼に賛辞を送る状態でした。しかし、今の勢いは民主党のハリス陣営にあると思います」(元「ミルウォーキー・ジャーナル・センチネル」記者)

事実、ハリス氏が、7月に集めた選挙資金は3億1000万ドル(約450億円)を超え、トランプ氏が集めた1億4000万ドル(約200億円)の2倍以上となった。

8月4日に公表されたCBSテレビなどによる世論調査では、ハリス氏が50%と、トランプ氏の49%をわずかながら上回り、、ブルームバーグなどによる激戦7州に関する調査でも、ミシガンやペンシルベニアなどで、ハリス氏がトランプ氏を上回った。これらの事実は、党大会を8月19日に控えた民主党にとって明るい材料である。