サプライズ利上げの狙いは「円安阻止」
日経平均株価が過去最大の下げを記録した。きっかけは日本銀行による利上げだったが、市場との対話を誤ったというか、市場を舐めた結果、手痛いしっぺ返しを食らったと見るべきだろう。慌てて早期の利上げ継続を否定したことで、日経平均株価は大きく値を戻している。果たして政府・日銀は今後どう動き、乱高下する日経平均株価はどうなっていくのか。
7月31日に行われた金融政策決定会合で日銀は追加利上げを決定した。それまで0~0.1%としていた政策金利を0.25%に引き上げるという内容だったが、多くの市場関係者はこのタイミングでの利上げは予想しておらず、「サプライズ利上げ」となった。
では、なぜこのタイミングで日銀は利上げに踏み切ったのか。おそらく「サプライズ」を起こすことも意図したものだった。狙いは「円安阻止」だったのは明らかだ。
話は3カ月前に遡る。2024年4月26日に開いた金融政策決定会合の後、記者会見した植田和男総裁は、その段階で1ドル=156円前後になっていた円安に対して、「今のところ基調的な物価上昇率に大きな影響は与えていないと判断した」と語った。
円安による輸入物価の上昇を避けたかった岸田首相
この発言を受けて市場は日銀が円安阻止に本腰を入れて金利引き上げを行うとは考えられないと判断、一気に円安が進み、4月29日には1ドル=160円を突破した。慌てて政府・日銀は為替介入を実施、瞬間的に1ドル=154円台まで戻したものの、円高基調になることはなかった。
5月7日には植田総裁は首相官邸に呼ばれて岸田文雄首相と会談。会談後に「最近の円安については日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認させていただいた」と植田氏は内容を記者団に語っていた。
「物価上昇率を上回る賃上げ」を繰り返し標榜してきた岸田首相からすれば、円安による輸入物価の上昇は、国内のインフレに火を付けることになり看過できない。物価上昇に対する国民の不満が高まり、電気・ガス料金への補助金を5月分で終了することへの批判も出ていた。岸田首相からは相当強い調子で円安阻止を求められたのだろう。
植田総裁は5月9日に出席した国会での質疑でも、急速で一方的な円安の進行は日本経済にマイナスだとして、「基調的な物価上昇率について為替変動が影響する、あるいはそういうリスクが高まるときには金融政策上の対応が必要になる」と踏み込んで発言せざるを得なくなった。