一時、1ドル160円まで円安が進んだものの政府・日銀による(覆面)介入もあり151円台まで円が買われ、その後はさらなる介入の可能性もにらんだ神経質な展開が続いています。日米金利差が縮まらないこともあり、この原稿を書いている段階では155円台です。今回は、これまでの円相場の経緯と今後の見通しを説明します。
日米金利差で円安に
これまでの円安は多くの部分を日米金利差で説明することができます。図表1をご覧いただきたいのですが、表にある「TB3カ月」という数字は、「Treasury Bill3カ月物」で、3カ月物の国債金利を表しています。米国の短期金利のひとつで、自由金利ですが政策金利にほぼ連動して動きます。
ちなみに米国の政策金利は、フェッドファンド金利(FF金利)オーバーナイトといい、1日だけ銀行間で貸し借りするときに使われる金利です。そこに毎日、中央銀行(FRB)が介入し金利を調節しています。ちなみに現在の政策金利は5.25~5.50%と歴史的に見ても高い金利です。
表の一番上にあるのは、2022年3月の数字ですが、この頃は米国の短期金利はまだ0%台でした。当時、インフレ率はすでに8%台に達していましたが、FRBは「インフレは一時的」との見方から、コロナで傷んだ経済の立て直しを優先したために、金利を上昇させていなかったのです。FRBはインフレの先行きを見誤ったのです。その頃のドル円相場は表にあるように118円台でした。ちなみにその年(2022年)1月のドル・円相場は114円程度でした。
それが、インフレが収まるどころかどんどんひどくなり、その年の6月には9.1%にまで達しました。FRBも「一過性」などとは言っておれず、急速に政策金利を上昇させ、それにつれ、表にあるように3カ月物の金利も急激に上昇を続けたのです。
一方、円の短期金利は、日銀が政策金利を変更せず、ずっとマイナスだったので、米金利そのものが、ほぼ日米金利差と言えます。日米金利差が広がるにしたがって、高い金利のドルが買われ、先ほども述べたように2022年初には114円程度だったドル相場が、130円台、140円台と一気に円安が進んだといった構図です。
ただ、2022年暮れから23年初にかけて、米金利は4%台まで上昇したにもかかわらず、つまり日米金利差が拡大したにもかかわらず、一時130円台まで円相場が戻しました。これは、シリコンバレーバンクなどの銀行の破綻が懸念されたからです。金利の急上昇により、米国債などを大量に保有していた銀行の中には、その含み損が急に膨らみ、金融危機がささやかれました。
その際には、「避難通貨」として円が買われ、22年秋には一時150円台まで進んだ円安が、130円程度まで円が買われたわけです。