金利差拡大でキャリー取引が急増
その後、2023年に入り米国での金融危機懸念が遠ざかると、また金利差に焦点が集まり、ドル高・円安の方向に動きました。そして、「キャリー取引」が活発に行われるようになりました。
一般的に、金利が高い通貨が買われる傾向があるのですが、キャリー取引というのは、金利がほぼゼロの円を借りて、即座にその円を売り、金利の高いドルを買って運用することによって金利差を稼ごうとするものです。一般的には4%くらいの金利差があるとキャリー取引は起こりやすいと言われています。
2022年末には4%以上の金利差が発生し、2023年にはそれが5%まで拡大したのですから、キャリー取引が活発に行われるようになりました。
キャリー取引が起こると、円が売られドルが買われるわけですから、円安が進みます。これによりキャリー取引を行っている人は、借りた円が安くなるわけですから、金利差だけでなく、為替でも二重に儲かるという利点があります。
そうして、じりじりと円安が進んだわけです。
4月の日銀政策決定会合が現状維持で円安が加速
ここまで見たように、日米金利差が円相場に大きな影響を与えてきたわけですが、3月18日、19日の日銀の政策決定会合で、それまでマイナスだった政策金利を0~0.1%程度まで戻す決定が行われました。
マイナス金利からの脱却は、日本の金融政策を正常化させる第一歩としては評価されたものの、しょせん、日本の金利は0.1%程度上がったにすぎず、米国が「インフレの粘着性が高い」として政策金利を下げないことから、日米金利差はほとんど縮まらない状態が続き、円相場も150円を超える円安が続きました。
そこで注目されたのが4月25日、26日に行われた日銀の政策決定会合だったのです。マイナス金利解除にもかかわらず円安が収まらないことで、この4月の政策決定会合では政策金利を0.1%程度上昇させるのではないかという市場の意見もありました。実際、政策決定会合でも円安に対する懸念は大きかったようです。しかし、現状の緩和策を続けるというのが結論でした。
これを受けて、市場はさらに円を売る方向で進み、一時160円をつけるまでの円安となりました。政府としても、過度の円安や急激な為替相場の変動を見過ごすわけにはいかず、2度のドル売り・円買いの介入を行ったと市場では言われています。