新型コロナの影響で「日本で最も小さな航空会社」が危機に直面している。天草エアライン(熊本県)の専務で、元JAL整備士の小林知史氏は、それでも1日4回の「機体磨き」をやめない。小林氏は「どんな状況だろうと、飛行機を安全に飛ばすことが私の役割。機体磨きは、35年前の日航機墜落事故から学んだ教訓だ」と話す——。
元JAL整備士が心に刻む「日航機墜落事故」の教訓
新型コロナウイルスで航空業界が大打撃を受けている。それは大手だけではない。「日本で最も小さい定期航空会社」と呼ばれる天草エアラインも、かつてない危機に直面している。
2020年3月期は11年ぶりに1億6627万円の赤字に転落した。4月の乗客数は前年同月に比べて8割減だった。48席ある機内は、乗客が1桁ということも多い。コストを絞るため1日10便の定期便は、いっとき2便に減らした。
そんな状況でも、専務の小林知史(64)は1日4回の機体磨きを欠かさない。天草の人たちの生活の足である定期便を安全に飛ばすためだ。小林にとって、機体磨きは35年前、520人が犠牲になった日航機墜落事故から学んだ教訓でもある。
小林は元JAL整備士。墜落事故の原因が、ボーイング社の後部圧力隔壁の修理ミスだったとはいえ、機体にできた亀裂を整備士が点検で発見できていれば、墜落事故は防げたかもしれない、という後悔がある。
機体磨きはボティをきれいにするためだけではない。汚れや小さな傷が機体の異変につながることがある。特に、ボディのつなぎ目は金属疲労を起こしやすい。磨くことで異変の兆しを素早く把握し、安全性を高める効果がある。小林の安全思想の表れなのだ。