※本稿は、武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
ストレスを感じた時、どんな症状が出るか
人生も仕事も、思うようにはいかないものです。ときには想定外のストレスがかかり、どうにも対応が難しいということもあるでしょう。そんなときにはストレスを「重症化」させないことも大切です。そこで今回は、ストレスを重症化させないためにみなさんに知っておいてほしいことを紹介しておきます。
まずなんといっても大切なのは、自分のストレス症状をよく知っておくことです。
人は、自らにかかる負荷が自分の許容限度を超えていっぱいいっぱいになる、つまり「ストレス」を感じると、その反応が、心や身体、行動に症状として現れます。
このうち、本人にとって一番わかりやすいのは身体症状(不眠、食欲低下、頭痛やめまい、動悸や冷や汗など)で、わかりにくいのが精神症状(やる気が出ない、億劫、不安、イライラ、憂鬱など)。また、他人にわかりやすいのは行動に出る症状(お酒やタバコの増加、遅刻や早退、会話の減少など)です。
「心の症状」が見逃される3つの理由
ストレスによる心の症状は、気づかれず、見逃されやすく、対処されにくいのが実情です。その理由は3つあります。
1つ目の理由として、「心の症状は、目に見えない」ということが挙げられます。他人の心の症状に気づくことは、目に見えないがゆえに難しいものです。また、自分の心の症状も、目に見えないため、気づきにくいと言えるでしょう。
自分の心の症状は、さらに2つ目以降の理由も加わり、より気づきにくいとされています。
2つ目の理由は、心の症状は、いきなり始まるわけではないということです。
例えば、ある朝、突然イライラが始まるわけではないですし、ある日突然、集中力がなくなるわけでもありません。
こうした症状は徐々に現れるため、本人は自覚しにくいのです。
多くの場合、心の症状に理解のあるカウンセラーや医師との問診の中で、「具体的にこんなことありませんか?」と聞かれ、気づかされるケースが多いです。しかし、その点に気づいたからといって、すぐに治療開始とはならずに、以下の3つ目の理由に続くことも多いのが実情です。
その3つ目の理由は、自分の心の症状そのものを認めたがらない、または、その原因を精神的なストレスによる心の症状(反応)だと認めたがらないという点が挙げられます。
これはエリートや有名企業の社員ほど強い傾向にあります。
だからこそ、家族や友人に心の症状を指摘してもらうか、もしくは産業医などに、実際に起こっている心の症状は「ストレスに由来する可能性もある」と指摘してもらうことが、とても大切なのです。