不安やストレスからメンタル不調を起こしてしまう人たちには、共通点がある。これまで1万人を診察してきた産業医の武神健之氏は「自分への期待値が高すぎる人が多い。そのため、不調に気づいてもそれを打ち消すためにがんばってしまう」という――。

※本稿は、武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

ノート パソコンとコーヒーが付いているオフィスの疲れ女性実業家
写真=iStock.com/Poike
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「新生活を始めた人」と「育休明けの人」に共通すること

不安やストレスをこじらせてメンタル不調になってしまう原因の1つに、自分に対する「高すぎる」期待があります。

このパターンがよく見られるのは、新生活を始めた人たちと、育児休暇明けの働くママさんたちです。

1月や4月、新年や新年度が始まると、多くの人は気持ちを新たにし、自分自身に期待をかけます。たとえば、お稽古事や自己研鑽などを始めて、思った通りにうまくいけばいいのですが、うまくいかないケースも当然あります。

そんなとき、すぐにあきらめられる人はいいのですが、「努力が足りないから、もっとがんばらなければいけない」と考え、自分を追い詰めてしまう人もいます。

このようなタイプの人は、周囲からすると何らストレスを感じてないように見えても、自分への期待が高すぎるために、自分自身でストレスを生じさせてしまい、メンタルヘルス不調になってしまうのです。

ずっと「スイッチオン」の人は、潰れやすい

また、育児休暇明けの働くママさんたちの中には、自分への期待が高すぎて、それが原因で潰れてしまうケースもたくさんみてきました。

ワークライフバランスが叫ばれる中、会社での仕事モード、いわゆる「オン」の状態と、会社を出た後の「オフ」の状態の切り替えを、多くの人はメリハリとして考えています。

このオン状態は、緊張状態と考えることができます。中には、職場以外でも気持ちの上での緊張状態が続いている人がいます。そのような人たちは、場合によっては、本人の自覚がないまま、オン状態が続くことでストレスによって潰れてしまうことが少なくありません。

典型的なオン状態の持続は、育児休暇から復帰したお母さんや、子どもが生まれて帰宅後に「育児参加」する若いお父さんに見られる傾向にあります。

そうした人たちは、常に精神的な緊張が高く、時間に追われているにもかかわらず、それを自覚していないため、メンタル不調の発覚が遅れてしまうのです。