「自分の時間」のために延長保育をする

では、どうすればいいか。

育児と仕事のバランスをとろうにも、そもそも時間がないため、両立させることが困難なのです。また、オン・オフのメリハリをつけましょうとよく言いますが、実際にはオフの時間を捻出するのはとても難しい作業になります。1つアドバイスできるとするなら、大切なのはオフの時間ではなく、自分の時間をオンにすることなのです。

仕事が早めに終わる日にあえて保育園を延長して、30分だけカフェでゆっくりする、あるいはウインドウショッピングやマッサージに行くなど、自分のために時間を使ってみてはいかがでしょうか。きっと、帰宅後は感謝の笑顔で皆に接することができるはずです。週末も夫婦で相談して、半日ずつお互いに自由時間を設けてみるのもいいでしょう。そうやって、自分の時間をオンにする発想で、時間を捻出してみてください。

「延長保育」にも「家事代行」にも罪悪感はいらない

実際、前述の2児のお母さんにも、「自分のために、預かり保育の延長を使ってみてはどうでしょうか」と提案しました。

武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)
武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)

彼女は普段から、仕事が終わらない時には預かり保育の延長をしていましたが、退社したとたんに保育園に向かってダッシュしていたそうです。帰宅したら帰宅したで、いつもより遅い時間ですから、子どもの就寝時間までが余計に慌ただしく、イライラしてしまうことが多々ありました。

私のアドバイス後、30分だけ喫茶店でぼーっとしたり、雑誌を読んだり、ウインドウショッピングやマッサージなどする時間をとってみたら、いつもよりは心に余裕があり、帰宅後も焦らずイライラせず、ご主人にも子どもにも笑顔で接することができるようになったそうです。

罪悪感に囚われて、延長保育の利用に躊躇する方も少なくありませんが、私の経験でいえば、利用後は「使ってよかった」という声が圧倒的に多い印象です。

延長保育以外にも、家事代行をお願いすることにした方もいました。週に1回だけ、家の掃除や、家族のご飯、週末の食事の作り置きをお願いすることで、ずいぶんと心に余裕が生まれたという声もよく聞きます。少しでも、お母さんの心と身体に余裕ができることは、自分だけでなくご主人、そして子どもたちのためにもなりますから、躊躇せずに活用できるものは活用していただければと思います。

「自分への期待」を下げる勇気を持とう

言うまでもなく、自分に高い期待をもつことは大切です。しかし、ときには柔軟に考えることが大切になります。

自分や周囲の心や身体における不調の兆しに気づきつつも、それを打ち消すためにがんばってしまうのは、その期待値が「高すぎる」可能性があります。時には、自分へも周囲へも、期待値やゴール設定を下げることで、状況が好転することがあることを忘れないでください。

【関連記事】
メンタルの弱い人ほど「ストレスの原因探し」に悩むという皮肉
日本人のがん1位「大腸がん」を予防する4つの生活習慣
外資系エリートの産業医が教える、職場の「やっかいな人」に対して平常心を保つための処方箋
不安や弱さを「強み」に変えられる人のメンタル習慣
自粛警察、マスク警察、帰省警察…日本で増え続ける「ゼロリスクおじさん」の正体