考えているうちは何も変わりません

すらりとした長身に、シンプルでスタイリッシュなファッション。とても75歳とは思えない若々しさを湛え、まっすぐな視線で、穏やかに語る。

中野善壽・寺田倉庫前社長。2011年、親交のあった創業家出身の寺田保信氏に事業再編を託され社長に就任すると、拠点を置く東京・天王洲の倉庫街をアートの溢れる街へと変貌させた。「空間を提供するだけなら、不動産業と同じ」と従来の倉庫業を見直し、売り上げの縮小もいとわずに大胆な事業再編に着手。世界中の芸術作品や、高級ワインを預かるプレミアム倉庫のスタイルへと転換し、キャッシュフローを重視する経営へ改革を進めた。

その手腕は国内のみならず世界中から注目されたが、中野本人は露出を好まず、メディアからは距離をとってきた。

伊勢丹からキャリアをスタートさせ、数々のブランドや事業を飛躍、あるいは再建した「プロの経営者」が、ついにヴェールを脱いで発表したのが本書といえる。