コロナが丸裸にした中国への日本の本音

本書はコロナ禍における著者の怒りと責任感の結晶だ。

経済ジャーナリスト 浦上早苗氏
経済ジャーナリスト 浦上早苗氏

コロナ禍でも日本が捨てきれない「中国バイアス」に対する怒り。そして、裏付けのある情報を届けようという責任感。この2つの要素が書籍という形で結実したのだ。

今回のコロナ・ショックがあらわにしたのは、日本でくすぶる中国に対する固定観念の強さだ。中国の感染症の専門家によって「人から人への感染」の実態が明らかにされても、日本では対岸の火事という扱い。「中国という特殊な環境だからこそ感染が拡大しているのだ」というバイアスから抜け出せなかった。

メディアも中国のコロナ情勢を色眼鏡で見ていた。2020年1月下旬、浦上氏が「日本でも感染者が増える」と編集者や記者に話すと、「いたずらに危機感を煽ってはいけない」「日本人の専門家の意見があるから必要ない」と取り合ってもらえなかったという。

「あれだけ中国のテクノロジーの情報はないか、と私に聞いてきた人たちが、ウイルスの話になると途端に中国の専門家の意見を聞かなくなる。これが本音だと感じました」

浦上氏はこの「中国バイアス」こそが、執筆の原動力にもなったと語る。中国が嫌いな人にこそ読んでほしいという。