どうすればオリジナリティのある人材になれるのか。KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院の三谷宏治教授は、「人は読んだものでできているが、漫然に読書をしていると他人と同じことしか言えなくなる。戦略的に本を読むことが大切だ」という——。

※本稿は、三谷宏治『戦略読書〔増補版〕』(日経ビジネス人文庫)の一部を再編集したものです。

カシオの計算機が売れた理由

どんなにイノベイティブな商品・サービスも、そのうち競合に追いつかれ、独自性を失ってコモディティ(誰でも安くつくれるもの)になっていきます。みんなの役には立つけれど、価格も下がり、いつでも他社品に取り替えられてしまう、ちょっと悲しい存在です。

シャープの液晶テレビも、カシオの電卓もそうでした。ただ、商品自体がコモディティになってしまっても、自社にオリジナリティがあれば話は別です。世界で毎年2億台が売られる電卓にしても、AMADAやメタフィスといったデザイン性の高いものは高値で売れますし、カシオは「インド向けに特化した電卓」で成功を収めました。インド特有の「桁区切り(※)」「検算機能」に対応した商品です。

※インドなど南アジアでは、千の位(3桁)で区切った後は2桁ずつ区切る。1千万の表記。インド式:1,00,00,000、米式:10,000,000、独式:10.000.000、仏式:10 000 000

インドの商習慣にいち早く、かつ徹底的に対応したお陰で、競合の倍の値段で年間100万台売れるようになりました。オリジナリティこそがモノの価値の源泉なのです。

ヒトだって同じです。瀧本哲史は『僕は君たちに武器を配りたい』で、人材のコモディティ化について論じ、6つのスペシャリティ(独自のオリジナリティある存在)を定義しました。

①トレーダー(営業)
②エキスパート(専門家)
③マーケター
④イノベーター(起業家)
⑤リーダー
⑥インベスター(投資家)

そしてこれからの世の中では、①②はダメで、③〜⑥だ、特に「業界の裏を読める人」である⑥の力を持て、と主張しました。