今回の全人代は「自国宣伝」「軍事力の増強」「香港への威圧」
中国を嫌う産経新聞の社説(5月23日付)は、1本社説という朝日社説の2倍の扱いでまずこう書く。
「極めて残念なのは、全人代が新型ウイルス対応に成功を収めたとする習近平政権の宣伝(プロパガンダ)と、軍事力の増強や香港の人々への圧力を公然と示す場になったということだ」
「李克強首相は活動報告で『感染症対策は大きな戦略的成果を収めている』と胸を張った。『国際協力を積極的に展開し、感染症情報を適時開示した』とも語った」
産経社説の指摘の通りだ。「自国宣伝」「軍事力の増強」「香港への威圧」など、まさに今回の全人代を象徴する言葉である。そして中国政府はコロナ対策で国際協力を行ったとはいえない。
産経社説も「だが、事実とかけ離れている」と指摘し、こう解説する。
「新型ウイルスは中国・武漢から広がった。発生当初に感染情報を習政権が隠蔽したため、パンデミック(世界的大流行)になったのではないかと指摘されている。全人代で自画自賛しても、むなしいばかりではないか」
「世界では感染者と死者が増え続け、パンデミック収束の見通しはついていない。中国でも吉林省などで感染の再度の広がりが報じられている」
「習政権は、初動の対応を含め全てを明らかにすると約束すべきだ。中国の影響下にある世界保健機関(WHO)を隠れみのにするのではなく、感染症に詳しい国々からの専門家を含む国際調査団を受け入れてもらいたい」
全人代での表明は産経社説が指摘するように自画自賛にすぎない。初動の対応など全てを正しく公表すべきだ。それができて世界は中国という国家を理解し、真に評価するはずである。
安倍首相は「習近平氏の国賓来日」をうまく利用できるのか
最後に産経社説は習近平氏の国賓としての来日を取り上げる。
「新型ウイルスの感染拡大で今年3月、習国家主席の国賓訪日が延期された。日中両政府は日程を再調整する意向を示している」
「だが、尖閣などで対日圧力を強めながら、関係が悪化の一途である米国への牽制策として国賓訪日を利用しようとする中国のしたたかな政治手法を、安倍晋三政権は見抜くべきだ」
中国は感染拡大が続くにもかかわらず、ここぞとばかりにその軍事力を世界に見せつけた。空母の演習訓練など南シナ海への海洋進出や、ベトナムやフィリピン、台湾に対する威嚇行為だ。日本に対しても中国公船が沖縄県の尖閣諸島近くの日本領海外側の接続水域を何度も徘徊している。領海侵入もあった。とうてい許される行為ではない。
「安倍首相は今こそ、中国が姿勢を根本的に改めない限り習氏の国賓来日を認めない方針に転じてもらいたい」
産経社説は「国賓来日はあり得ない」(小見出し)と強調する。習近平氏は国賓来日を免罪符に使ってアメリカのトランプ大統領の攻撃を少しでもかわしたいのである。安倍晋三首相はそこを逆手に取って中国外交を日本の有利な形に持っていきたい。「外交が得意」といわれる安倍首相だったらできるはずである。