入居者が部屋で亡くなった「事故物件」は、清掃やリフォームをしても、「何か起きるのではないか」という不安から敬遠されがちだ。そんな物件に一人で泊まり込み、カメラやサーモグラフィー、電磁波測定器などを使って「オバケなし」を証明する元不動産マンがいる。カチモード代表の児玉和俊さんだ。1件8万円の「オバケ調査」には、なぜ依頼が相次ぐのか。そこには、家賃を下げるしかなかった事故物件の価値を取り戻したいという、オーナーたちの切実な事情があった。ライターの蜜ツ冶さんが取材した――。
児玉和俊さん
筆者撮影
カチモード代表取締役の児玉和俊さん

賃貸オーナーを悩ませる“事故物件”

「所有している物件で入居者の自殺があった。このままでは部屋が『事故物件』と気味悪がられて借り手がつかなくなってしまう」――そんな物件オーナーの相談に全身全霊で応える人物がいる。

科学的見地から超常的存在の有無を調べるという事業「オバケ調査」を立ち上げた株式会社カチモードの代表、児玉和俊さんだ。

「事故物件とは入居者が部屋の中で死亡した物件を広く指しますが、じつは告知義務のあるケースは限られています。自殺や殺人といったケースで死去した場合や、自然死や事故死であっても特殊清掃を行う必要があった場合、その物件に住むことを検討している方に対して『告知事項あり』と記載して説明する必要があるんです」

自分が住もうと思った物件が「告知事項あり」だった場合、人はどのような感情を抱くだろうか?

「なんとなく気味が悪い」「何か起きるんじゃないか」と不気味に感じてしまうかもしれない。いずれも漠然とした感覚ではあるが、しかし理由がはっきりしないからこそ根強く底気味悪さが残り、好条件だったとしても結果的にその部屋を選ばないことも多いだろう。

22時から翌6時までの調査で8万円

そんな敬遠されがちな事故物件を救済するために児玉さんは「オバケ調査員」に。

ユニークなネーミングだが、元不動産マンとあって調査内容は本格的だ。物件でオバケの類と勘違いしやすい異常現象が起こるかどうか、起きた場合に原因を科学的に突き止めることをビジネスとしている。カチモードの代表兼、たった一人の調査員でもある。

オーナーからの依頼を受け、児玉さんがその物件に泊まりこむ。
筆者撮影
オーナーからの依頼を受け、児玉さんがその物件に泊まりこむ

調査は1案件、8万円(税抜)。

調査時間は夜22時から翌朝6時まで。この8時間、児玉さんは事故物件の部屋に一人きりでこもる。

「とはいえ、だいたい15時か16時には現地到着しておくようにしています。日が出ているうちに、その建物の共用部や周辺環境を確認しておくことも仕事のひとつなんです。物件内では何も起こらなくても、ポストがボロボロだったり自転車置き場が埃っぽかったりすると、住もうと検討している人でも初見の先入観で悪印象が植え付けられてしまうこともありますからね」

そういった物件内だけでなく外観まわりの部分までチェックし、調査後にオーナーにフィードバックをするというコンサル的な一面も持つのだ。